【詳細データテスト】フォルクスワーゲン・ゴルフR 加速はスムース 低速の乗り心地に難 高価すぎる
公開 : 2021.04.24 20:25 更新 : 2021.05.05 07:44
先代が性能も価格も魅力的だったゴルフRですが、新型は円熟味を増した反面、やや個性が弱まっている印象です。また、価格があまりにも高くなってしまいました。走りを楽しむためのオプション追加もためらってしまうほどです。
もくじ
ーはじめに
ー意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
ー内装 ★★★★★★★★☆☆
ー走り ★★★★★★★★★☆
ー使い勝手 ★★★★★★★☆☆☆
ー操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆
ー快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆
ー購入と維持 ★★★★★★★★☆☆
ースペック
ー結論 ★★★★★★★★☆☆
はじめに
次はいったいなにをすればいいんだ?最新の超ホットなゴルフを開発するにあたって、フォルクスワーゲンは自問自答したことだろう。
問題の根源は先代、すなわちゴルフVIIのRモデルにある。2014年に登場し、2017年にアップデートされたそれは2019年に生産を終了したが、あまりにも出来がよかったのだ。
繊細さと高額そうな雰囲気を兼ね備えた魅力的なルックス、なめらかなハンドリングと全般的にみごとな乗り心地で、先代ゴルフRは同世代のホットハッチを代表する一台となった。もちろん、むちゃくちゃ速い。
それだけに、改善の余地をみつけるのは難しいとさえ思えた。次はいったいなにをするというのか、われわれも疑問を感じずにはいられなかったほどだ。
その答えを探るのが、今回のロードテストである。敢えていうなら、ゴルフRは多くの点でトラディッショナルなままだが、大胆なイノベーションもまた、ひとつふたつみつけられる。しかし、詳細にチェックしていくまでもなく、ウォルフスブルクのプライオリティがここ数年で変化してきたことはすでに承知している。
4WDのハイパフォーマンスなゴルフは、1988年に登場したゴルフIIのラリーに源流を見出せる。しかし、それはホモロゲーションモデルとして5000台が限定生産されたのみだ。
このレシピで造られた高性能なゴルフが人口に膾炙したのは、4代目と5代目に設定された、V6搭載のR32でのことだった。6代目のRはエンジンを直4へスイッチしたが、出力はダウンするどころかむしろアップして、しかもハンドリングには一層磨きがかかった。
ゴルフRは実用的でありながら意欲的なモデルでもあり、なにより走りが魅力的だ。このクルマの人気が大きく高まり、ゴルフRは単なるゴルフのトップモデルであるだけでなく、フォルクスワーゲン全体のフラッグシップともいえる存在にまで成長した。そんな中で、7代目のRが登場したのである。
英国では、ゴルフの販売台数の1割がRモデルになると、フォルクスワーゲンは期待を寄せている。この数字はなかなか驚くべきものだが、この世界第2位の巨大メーカーにとって、いま、ゴルフRの重要度はいかほどのものなのだろうか。
彼らは今後も末長く繁栄していくために、EVで構成されるサブブランドのIDを次のチャプターの基軸として重要視している。ゴルフRのベクトルは、それとは正反対にあるのではないかと思わずにはいられない。
電動化へと突き進む風潮にあっては、ゴルフRは時代錯誤なクルマなのかもしれない。それは認めよう。それでもわれわれは、このクルマそのものの出来栄えがいかほどか、そちらのほうが気になってならないのだ。