【詳細データテスト】フォルクスワーゲン・ゴルフR 加速はスムース 低速の乗り心地に難 高価すぎる
公開 : 2021.04.24 20:25 更新 : 2021.05.05 07:44
走り ★★★★★★★★★☆
ホットハッチのパワーウォーズでは後続にオーバーテイクされてきたゴルフRだが、320ps/42.9kg-mに4WDの組み合わせは、これ以上のパフォーマンスが必要かと疑問を感じるに十分だ。
ローンチコントロールを使えば、ゼロ発進から4.4秒で97km/hに達する。ただ、DSGギアボックスが自動的にクラッチをかなり滑らせるので、もう少しいいタイムが出る可能性もある。
それでも、これは996世代のポルシェ911GT3に匹敵する数字だ。当時は驚くほど速いと評した、あの996GT3と同等の加速をするのである。
しかもゴルフRは、2速以上にシフトアップすることもなかった。ゴルフRより100psほどパワフルなメルセデスAMG A 45 Sを同じ環境でテストすれば、0−161km/hのタイムは9.3秒なので、その差はたったの1秒だ。ゴルフRは、その寸前で4速にシフトアップするまで、加速は衰えなかった。
加速テストに続き、新たなブレーキシステムの性能をテストするべくフル制動に移る。113km/hからの完全停止には、自信をもたらすようなペダルフィール以上に、大径ディスクがものをいう。45.9mという所要距離は、より車重が軽くトレッドが広いホンダ・シビック・タイプRより80cm短かった。
だが、そうした数字以上に衝撃的だったのは、爽快なドライビングだ。全開アタックをしているときでさえ、それが感じられたのである。
これは諸刃の剣でもある。というのも、パワートレインが楽に変速するさまは、ほとんどダルいといってもいいくらいなのだ。このDCTは、機敏な変速に定評があるが、現行世代では、レースモードであってもじつにシームレスなシフトチェンジをみせる。2100rpmで達したピークを5350rpmまでキープするトルク特性が、パワーデリバリーより優先されているところもある。
このパワートレインは、まちがいなく高性能だ。しかし、その加速感がときとして、あまりにも洗練されすぎているようにも思えてしまう。カタパルトから打ち出されるような継ぎ目のない速度の上がり方は、まるで速いEVのようだ。
トラクションに関しては、ドライ路面の直線を走っている限り、破綻することはないはずだ。ホイールが跳ねることも、トルクステアも発生しない。4WDシステムの4モーションが前後の駆動力をきっちり配分し、ひたすら加速していく。
ただし、コーナリング重視でESPをスポーツモードにすれば、テールをブレイクさせることもできる。もちろん、それをして楽しむには、時と場所を選ばなければならないが。