【なぜ?】普通車販売台数上位がトヨタばかりの背景 各社の売り方どう影響?

公開 : 2021.05.01 05:45  更新 : 2021.10.22 10:12

日産/ホンダが軽に注力した結果……

トヨタの小型/普通車市場における国内登録台数は、2021年1~3月に登録された車種の51%に達する(レクサスを含む)。

販売上位にトヨタ車ばかり並んでも不思議はない。

ホンダNボックス
ホンダNボックス    ホンダ

それならなぜ、トヨタ車が小型/普通車登録台数の過半数を占めたのか。この背景には、ほかのメーカーの販売動向も挙げられる。軽自動車に力を入れて、小型/普通車の登録台数を下げたことだ。

2021年1~3月に国内で販売された新車に占める各メーカーの軽自動車比率は、ダイハツが92%、スズキは82%、ホンダは57%、日産は41%であった。ダイハツとスズキはもともと軽自動車が中心だから、比率が高くて当然だが、ホンダと日産は近年になって大幅に増やした。

ホンダの場合、1990年頃の軽自動車比率は35%(乗用車に限れば14%)だった。それが2000年になると40%に増えて、2011年に先代(初代)Nボックスが発売されると、さらに増加して今の57%に至った。

ホンダの販売店では「フィットやフリードに加えて、ステップワゴンやシャトルから、Nボックスに乗り替えるお客さまも多い」という。

NボックスやNワゴンが増えて、小型/普通車は減ったから、ホンダの軽自動車比率が急上昇した。

日産はホンダと違って、以前は軽自動車を扱わなかった。

それが2002年に「日産車ユーザーの22%は、セカンドカーとして軽自動車を併用している」というデータに基づき、日産車ユーザーに売り込むべく、スズキMRワゴンのOEM車をモコとして販売するようになった。

この後、三菱と合弁会社のNMKVを設立して、2013年に先代(初代)デイズ、2014年にはデイズ・ルークスを発売する。そこで軽自動車比率が高まり、今日の41%に達した。

そしてホンダと日産の軽自動車が好調に売れると、小型/普通車は市場全体の登録台数を下げる。その結果、2021年1~3月に国内で販売された新車のうち、軽自動車が38%となった。

トヨタ内でもモデルが淘汰される可能性も

ヤリス、ルーミー、アルファードなどのトヨタ車が小型/普通車登録台数ランキングの上位に入った背景には、トヨタ車の商品力、トヨタの全店が全車を扱う販売体制、他メーカーの軽自動車に偏った売り方があった。

トヨタが小型/普通車で強みを発揮する一方、ホンダや日産が軽自動車中心になり、トヨタの小型/普通車シェアが50%を超えた。

トヨタ・ヤリス
トヨタ・ヤリス    トヨタ

その代わりに小型車+普通車+軽自動車の四輪車総市場で見ると、トヨタのシェアは2020年1~3月で32%まで下がる。

トヨタは販売1位メーカーだが、大量に売られる軽自動車はほとんど扱わない。したがって軽自動車を含めるか否かで、トヨタのシェアは大きく変わる。

軽自動車に偏った販売構成比は、メーカー別販売ランキングの順位にも影響を与えた。

2021年1~3月は、1位:トヨタ、2位:スズキ、3位:ホンダ、4位:ダイハツ、5位:日産だ。

スズキが2位に浮上したのは昨年からの新しい現象になる。月によってはダイハツが3位に上昇してホンダは4位に下がることもあり、メーカー別販売ランキング順位も軽自動車の時代を反映させている。

そして前述のとおりトヨタ内部の販売格差が拡大すると、車種のリストラも進む。

前述のヤリス・シリーズ、ルーミー、アルファードなどの上位車種は生き残るが、下位の車種や姉妹車は廃止される可能性が高い。

市場にあわず売れ行きは乏しくても、優れた商品は少なくない。

例えばS660は、運転がとても楽しいスポーツカーだ。独自の魅力を備えるが、販売が低迷して2022年3月に生産を終える。

ただし生産規模が小さいから、2021年3月末には生産枠を使い切り、既に新車販売を終えた。

欲しいクルマの販売台数が少ない時には、早めに購入を検討した方が良いだろう。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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