【こんな贅沢、あり?】マクラーレン・エルバの楽しみ方 ただのオープンカーでは語れぬ、異次元の魅力

公開 : 2021.04.23 06:45  更新 : 2022.03.18 14:45

電動化とは別軸の“究極”

ピットレーンからコースインして、1コーナーまでのわずかなストレートでアクセルを踏み込んだだけで、強烈な加速Gが炸裂。

1コーナーを立ち上がってさらに加速していくと、強大なトルクで蹴っ飛ばすような加速を見せたが、でも至ってジェントルだ。

車速が高まると、カーボン・ファイバー製ディフレクターが自動的に上昇。前方からのエアフローを上方に跳ね上げ、仮想的なキャノピーを作り出し、コクピットを強烈な風圧から守る。AAMSというこのシステムは、ボタン操作でキャンセルすることも可能。
車速が高まると、カーボン・ファイバー製ディフレクターが自動的に上昇。前方からのエアフローを上方に跳ね上げ、仮想的なキャノピーを作り出し、コクピットを強烈な風圧から守る。AAMSというこのシステムは、ボタン操作でキャンセルすることも可能。    神村 聖

最近、ハイブリッドや電気自動車のハイパフォーマンスカーに乗る機会も増え、モーターならではの一気に立ち上がるトルクやシームレスな加速に驚かされることもあるが、エルバはトルク感といい、なめらかさといい、まったく引けを取らない。

いや、勝っている。

さらに、エンジンならではの回転の上昇に伴う高揚感があるからテンションが上がる。

こう見えて なぜ怖さがないのか?

ダイナミクス性能も究極だ。俊敏なハンドリングなのに、挙動の乱れというものが何も起こらないので、リスクへの怖さがない。

これほどハイパワーで速いクルマを、これほど安心感を持って走れるなんて、ちょっと異次元の世界観だ。

AAMSをオフにすると、そこは別世界。エルバには、後述のレーシング・ヘルメットや、特別スペックのドライビング・サングラスが標準装備される。
AAMSをオフにすると、そこは別世界。エルバには、後述のレーシング・ヘルメットや、特別スペックのドライビング・サングラスが標準装備される。    神村 聖

試しに、ヘアピンコーナーの立ち上がりで、まだステアリングが切れている状態で思い切りアクセルを開けてみたが、やっぱり何も起きなかった。

当然、クルマが制御してくれているのだが、それすら感じさせないところがまたスゴイ。ブレーキがかかっているとか、加速が鈍いとか、そんな感覚すら抱かせずに何事もなかったかのようにクルマを前に推し進めていくのだ。

それでいて、クルマに乗せられているのではなく、ドライバーが操っているプレジャーがある。

オープンかつダイレクトで、クルマからの情報量が多いのも安心できる要因だろう。

さすがにサーキットスピードになると、AAMSが作動しても髪は乱れる。

果たして、どの程度効果があるのか、走行中、手動でシステムオフにしてみた。すると、突然風が暴力的になり顔が痛いほど。

驚くほどの変化だった。つまり、かなり効果的ということだ。

あなたはヘルメット派? それとも…

シールドすらない、オープンカーという斬新なコンセプトにより、クルマと一体感を味わえるエルバ。

サーキットをホンキで走る方にはBELLのレーシング・ヘルメットが用意される。

億単位のスペシャルカーだけが持つエレガンス。思わず見とれてしまうディテールがそこかしこに。
億単位のスペシャルカーだけが持つエレガンス。思わず見とれてしまうディテールがそこかしこに。    神村 聖

一方、公道においては米国陸軍特殊部隊用スペックを備えるドライビング・サングラスが用意される。

今回はAAMSの効果を検証するため、敢えてヘルメットを被らずに走行してみた。限界域のパフォーマンスも素晴らしいが、公道での、髪が乱れない領域でのドライブも是非味わってみたいと思わせた。

オープンのプレジャーはもちろんだが、実は乗り心地がとても良かったからだ。

通常、クルマはA地点からB地点への移動の手段である。が、エルバはA to Aのクルマ。

つまり、どこかに行くために乗るのではなく、エルバに乗るために出かけるということ。どんなシーンにも似合い、どんなシーンでも乗りこなせる。もちろん、雨の日は乗らない。究極の、贅沢なクルマです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    佐藤久実

    Kumi Sato

    大学在学中にレースデビューし、耐久レースをメインに活動。ニュルブルクリンク24時間レース、スパ・フランコルシャン24時間レースで入賞を果たす。モータースポーツで培ったスキルをベースにインストラクターとしても活動。東海大学工学部動力機械工学科非常勤講師、芝浦工業大学特別講師の経験あり。日本カー・オブ・ザ・イヤー、World Car Awards、日本ボート・オブ・ザ・イヤーの選考委員も務める。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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