【常に変化を受け入れる】アラン・マクニッシュ ドライバーからチーム代表へ アウディ・フォーミュラEのボスに訊く
公開 : 2021.04.25 08:05 更新 : 2021.07.12 18:38
個性豊かなチームメンバー
マクニッシュはチームをどのようにマネジメントしているのだろうか?
元チャンピオンのルーカス・ディ・グラッシはLMP1のチームメイトで、豊富な経験と強い性格で知られている。一方、レネ・ラストはDTMツーリングカーで3度の優勝経験があるが、昨夏、レースでの不正行為でダニエル・アプトが解雇された後にチームに引き抜かれたときには、フォーミュラEで1回しか出走したことがなかった。
「これまでのところ、彼らは同じコースを走っていないので、比較的楽でした」とマクニッシュは言う。
「2人の性格は異なります。ルーカスはよく知られた存在で、ストリートファイターです。たまにゴタゴタもありますが、たいていは大丈夫です。彼がポイントを稼いでくれるのは、どのチームにとっても必要なことなのです」
「レネが昨年のベルリンに参加したのは、当然の選択だったと思います。というのも、彼はこれまでのレースのほとんどで勝利を収めているからです」
「彼は非常に分析的で、マシンが自分にどう作用するかではなく、自分がマシンにどう作用するかを考え、それに合わせて適応し、形を作っていきます。彼がそうしてくれると、わたしはとても嬉しかったですし、正直なところ少し安心しました。そして最後の2レースでは、2回連続で予選を勝ち抜いてくれました。彼の頭の中では、一度理解したことを繰り返すことができるのです。そして、それをDTMで実現したのです」
ディ・グラッシとラストは今、単純なタイトルではなく、世界選手権を目指して競っている。それで違いは生まれるのだろうか?
「チャンピオンになれば違いは生まれるでしょう」とマクニッシュは言う。「とても大きな賞ですからね」
例えば、マクニッシュはその輝かしいキャリアの中で、アメリカン・ル・マン・シリーズで3つのタイトルを獲得したが、これは名実ともにメジャーな世界タイトルだ。彼は、これまで手にした中でどのトロフィーを一番誇りに思っているのだろうか。2013年のWECトロフィーのレプリカ(FIAは本物を保管している)が彼の手元に届いたのは、7年の歳月が流れた昨年のことだが。
将来的にはアウディLMDhを率いる?
では、彼が新しいレプリカをコレクションに加えるのはいつになるのだろうか?今年でなくても、近い将来、アウディのLMDhチームの代表として、ということはないだろうか。マクニッシュは、この質問が出てくることを承知していたのか、笑いながら次のように応えた。
「(LMDhの代表になるかどうかは)当然の疑問ですよね。LMDhの状況はよく知っていますし、これまでその一部でした。しかし、それは2023年のことであり、率直に言って、LMDhのことを考える前に2021年のことで精一杯なのです」
それもそうだ。しかし、フランク・ランパードがチェルシーで体験したように、マネジメントは楽ではない。スポーツカー耐久レースでチームを率いることが、本当にマクニッシュの未来なのだろうか?マクニッシュは長い沈黙の後、ようやく口を開いた。
「それについては保留にしています。わたしのような人間とは関わりたくないので、レースチームの運営はしたくないと言ったことがあるんですよ」
「わたしは、情熱を持って取り組むことをこれからも続けていきます。モーターレースはわたしの情熱です。朝、わたしを奮い立たせ、すべてを捧げようと思わせる何かが必要なのです。レースをやめたとしても、365日、レースのことを考えているのです。レースが好きなんです」
「でも、物事は変化するものだと思っています。10年前のわたしはまだレーシングドライバーであり、チーム代表になるとは考えてもいなかったからです。ましてや、EVレースシリーズのチーム代表になるとは夢にも思いませんでしたよ。これからも一歩一歩進んでいきたいと思います」
マクニッシュがル・マンの表彰台に立ち、アウディの3人のドライバーと一緒にあの有名なトロフィーを掲げる……ロマンティックな想像であり、可能性の域を出ないものではない。しかし、夢は眠る人のためにあるのであって、アウディのフォーミュラEチーム代表は、今ここで直面している課題に目を覚ましている。そして、レースでは「今」が本当に重要なのだ。