【3代目も実力派】いすゞD-マックス V-クロスへ試乗 謙虚な労働者から一新 後編

公開 : 2021.05.03 19:05

いすゞのトラックといえば、使える道具のような存在。ライフスタイル重視のユーザー向けにアップデートされた3代目D-マックスを、英国編集部が評価しました。

オフロード性能にNCAPで5つ星の安全性

text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
3代目へ一新したいすゞD-マックスで特筆すべき点が、事故時の安全性をテストするユーロNCAPで、このクラスのピックアップ・トラックとしては初めて5つ星を獲得したこと。大きなエアバックや剛性の高いシャシー、運転支援システムなどの効果だろう。

静止した物体が前方にある場合、40km/hまでなら自動でブレーキを掛け停止してくれる。狭い田舎道を走るような場面では、ありがたく感じることも多いはず。

いすゞD-マックス V-クロス(英国仕様)
いすゞD-マックス V-クロス(英国仕様)

D-マックスの印象をさらに高めてくれるのが、秀でたオフロードの走破性。アンダーボディの保護が強化されたほか、ヒルディセント・コントロールや電子制御の四輪駆動システムを備え、複雑な地形に対する能力には驚かされる。

45度の斜面の堤防を越えて、腰ほどの深さの川を渡りたいと考えるピックアップのドライバーは多くないだろうが、それも可能な実力を備えていることは安材料の1つになる。エアインテークの位置を持ち上げ、最大で800mmの渡河深度を有する。

四輪駆動システムは、最大104km/hの速度までなら、0.69秒という短時間でリアのドライブシャフトを接続させることが可能。このセグメントでは最速だという。

歩いてでも難しいほど不整な地面へ立ち向かう時に有効なのが、リアのロックデフ。動作は上質とはいえず、車内は大きく傾いて揺さぶられる。しかし、この価格帯で同等の走破性を備えるクルマは、SUVも含めてもほかに思い浮かばない。

トルクフルな1.9L 4気筒ディーゼルターボ

エンジンは1.9Lの4気筒ディーゼルターボ。排気量の割に最大トルクは36.7kg-mと太いが、ハイラックス並みの洗練性はない。ノイズや振動などに対する対策は取られていても、アイドリング時から荒く、負荷がかかるとディーゼルだという主張が強まる。

一度スピードに乗ってしまえば、質感は許せる範囲に収まる。ただし80km/hを超える速度域では、ハイラックスよりロードノイズや風切り音が目立つようだった。0-100km/h加速に要する時間は、もどかしい13.0秒となっている。

いすゞD-マックス V-クロス(英国仕様)
いすゞD-マックス V-クロス(英国仕様)

トランスミッションはアイシン社製の6速AT。短時間で変速を完了し、レシオ間の比率も良い。だが加速中の反応は鈍く、高回転域まで引っ張って、少し待ってからシフトアップするような印象を受けた。

D-マックスの車重はライバルより軽い方で、2030kg。排気量は小さいものの、郊外の流れの速い道路でも充分スピードに乗って運転できる。英国では乗用車扱いとなり、一般道でも97km/hまでが許される。追い越しや合流を素早く終えることは難しいけれど。

燃費も良好で、10.9km/Lがうたわれる。日常的に必要になることはないかもしれないが、3代目でも3500kgまでの牽引能力は頼もしい。

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