【現場を取材】トヨタ全車種併売から1年 ディーラーどう変化? 成果と課題
公開 : 2021.05.05 11:55 更新 : 2021.10.20 17:32
コロナ禍も味方? 経営面では好影響
さらに、統合後は経営面でも好影響を及ぼしたようだ。
それまでの4社がそれぞれ保有していた経営資源が1つにまとまり一元管理することで、より効率的な経営が推進できるようになったという。
その実例として、中古車販売ディーラーだった敷地にレクサスディーラーを新規オープンさせたことを挙げた。
さかのぼれば、豊田章男社長が全車種併売を掲げたのは2018年11月のことだった。
当初は2022~25年をメドとしていたが、2019年6月には2020年4月に前倒しと修正した。この決断は、コロナ禍の来襲が一切予想できなかったことを考慮しても、英断だったのではなかろうか。
トヨタとしては、コロナ禍がさらに追い風となった格好だ。
敢えて東京で先行統合 問題点や課題は?
順風満帆と見て取れる、トヨタモビリティ東京だが、問題点や課題はないのか?
八木氏は、基幹システムの統合、一元化を1番目に挙げ、続いて旧販売チャネルごとに残る、異なるオペレーションの統一と、店舗完結型営業を可能にする店舗ファシリティの統一を挙げた。
具体的な問題点は語られなかったが、元々は違う4つの会社が1つにまとまるだけでも、さまざまなところに不協和音が発生することぐらいは、当事者でなくても想像はできる。
トヨタモビリティ東京が他地域に比べて1年早く統合された理由がわかるような気もする。
店舗数の多い東京で先に実施し、浮き彫りになった問題点とその解決をナレッジとして他地域に展開すれば、全国全車種併売化の強力な推進力となろう。
今後の展望はトヨタらしさが?
最後に、トヨタモビリティ東京の今後の展望をうかがった。
いの一番に挙げたのは、モビリティ社会への変革に向けた取り組みを加速させることだった。
社名に「モビリティ」が含まれるのは、単に車の販売だけでなく、多角的なモビリティを地域社会に提供する企業であるという狙いがある。
また、SDGs達成への取り組みの強化を推進するとのこと。
さらに、現状の課題となっているシステム統合を2~3年以内に展開し、社員全員が働きやすい環境をつくりたいとも語った。
インタビューの最後に「社員全員が」と発言されたのが、いかにもトヨタらしいと感じたところだ。顧客だけに目を向けるのではなく、一緒に働くファミリーも大切にしているのだ。
新車販売で快進撃を続けるトヨタ。商品力と販売力の見事な融合が、その実績を支えていたのだった。現時点、全車種併売化は成功といえよう。