【電動ラリークロス・マシン】スタード・フォード・フィエスタERXへ試乗 未来の興奮 前編

公開 : 2021.05.08 08:25  更新 : 2022.11.01 08:55

テイン社製のサスにAP社製のブレーキ

駆動用モーターは、スタード社が開発した専用のインバーターで制御。ステアリングホイール上のダイヤルで、トルクやアクセルレスポンスの調整ができる。必要なら、トルクベクタリング効果を得ることも可能だ。

シャシーやボディは、R5クラスのフィエスタと同等。スタード社が開発したカーボンファイバー製のフロントバンパーや巨大なリアウィング、張り出したフェンダーなどは、いかにもラリークロス・マシンらしい。

スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)
スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)

サスペンションは、テイン社製の4ウェイ調整式ダンパーとスプリングを備え、ブレーキはAP社製。ラリークロスは短距離レースのため回生ブレーキは機能させないというが、ラリー仕様では有効だとスタードの担当者は話していた。

車重は1450kg。内燃エンジンを搭載したライバルより200kgほど重いが、強力なトルクが相殺してくれる。実際に競い合うと、ほとんど差はないらしい。これも、従来のマシンと一緒に参戦できる理由の1つだ。

実際、フィエスタERXとラリークロス・マシンのプジョー208 T16とでドラッグレースを披露してもらったが、目立った加速性能の差はないように見えた。

ラリークロスを映像ででも見たことがあるのなら、フィエスタERXの静けさには衝撃を受けるだろう。英国リッデン・ヒル・サーキットのスタートラインに並んでも、興奮は沸き立ってこない。

0-100km/h加速は驚愕の1.8秒

筆者の隣、助手席に座っているのはスタード社を率いるラリードライバーのマンフレッド・ストール。車内も静かだから、ローンチコントロール・プログラムの説明も問題なく聞き取れる。

運転席に座れば、否が応でも興奮が高まる。頭が震えるほどの激しい振動とノイズを発する4気筒ターボエンジンがないから、実際にスタートするまでは平穏で少し不思議な感覚だ。

スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)
スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)

気を引き締め直す。ステアリングホイール上の赤いボタンを押すと、パワーセーブがかかるパドック・モードが解除され、フルパワーを解き放てるようになる。

直立したハンドブレーキ・レバーを手前に引き、先端についている黄色いボタンを押して、ローンチコントロール状態にする。左足でブレーキペダルを踏み、右足でアクセルペダルをフロアまで踏み込む。こんなことをしても、まだ車内は静かだ。

ストールの合図に合わせて、ハンドブレーキのレバーを前に倒すと同時にブレーキペダルから力を抜く。ウォーっと声を上げてしまう。呼吸すら難しい。暴力的に、身構える間もなく、フィエスタERXがダッシュし始める。

レスポンスは瞬間的で、トラクションは強大。611psのすべてが、加速度へ変換されていく。0-100km/h加速は驚愕の1.8秒だというが、実際はさらに鋭く感じる。

タイヤは舗装に浮いた小石をボディに叩きつけ、静かだった車内はマシンガンで襲撃されているかのよう。ギアボックスからはメカノイズが、電気モーターからは高音域の唸り音が、さらに筆者のうめき声が重なる。

この続きは後編にて。

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