【詳細データテスト】BMW M4 文句なしのエンジン 卓越したシャシー ルックスだけが問題
公開 : 2021.05.01 20:25 更新 : 2021.05.05 07:44
走り ★★★★★★★★★☆
客観的にいえば、このクルマの直6ツインターボは、ほぼ非の打ちどころがない。レスポンスはよく、必要とあればまったく無関心で不器用なドライバーでも運転できるくらい行儀よくしつけられている。
Mモデルのエンジンに期待されるような、もっとえもいわれぬ資質に欠けると思うひともいるかもしれない。それでも、BMWが主張するような速さをもたらすだけのものはある。
BMW Mの電子制御ローンチコントロールは、これまで通り使い方がやや直感的でないところもある。作動させるには、まず電子制御トラクションコントロールを完全にオフにする必要がある。それから、トランスミッションをマニュアルモードに入れるのだが、これは奇妙な話だ。クルマ自身がトラクションを電子制御し、加速に合わせて最適なシフトポイントを選ぶのだから。
しかし、いったんセットのしかたに慣れてさえしまえば、システム自体は確実に作動してくれる。2速で発進するが、それでも掛け値なしに速い。オプションのカップだったり、xドライブこと4WD仕様だったりすれば、おそらくはさらに速かったはずだ。
テスト車は、標準装備のミシュラン・パイロットスポーツ4Sを履いていたが、それでも0−97km/hは最速3.8秒で、往復計測の平均でも3.9秒をマーク。ゼロヨンは12.1秒で、これはV8を積むM5を3年前にテストしたときのタイムから1秒と遅れていない。
だから、これは今の基準に照らしても非常に速いクルマであることを疑う余地はない。M印の直6エンジンにとっては常に、アウトプットのデリバリーのリニアさは、KOパンチのような絶対値の強力さよりも重要な資質だが、このM4はまさにそのスペシャリストだ。66.2kg-mのトルクは、先代M4のGTSやCSを10%上回るだけでなく、1000rpm以上低い回転数からピークに達するのである。
S58ユニットは超ハイレスポンスに感じられ、しかも一貫して力強い。中回転域でのドッカンターボ感も、その上でやせ細る感じもなく、ひたすらスムースで、ペダル操作に対してうれしいくらいキビキビしている。そして、その勢いが、エンジン回転数にはほとんど左右されない。
回りっぷりも、7000rpmを超えるまで淀みない。サウンドには、往年のMエンジンのような魅力こそないものの、少なくともわれわれが耳にした限りでは、過度に人工音を添加した感じでもない。おそらく、もっと生のままの音にできたはずだが、それでも聞いていて楽しいものになっている。
8速のトルクコンバーター式ATは、おそらくエンジンに比べて、より批判を受けやすいだろう。原則的に、DCTのほうがシフトチェンジはやや速く、パドル操作にも積極的に反応するうえに、変速が多少は明確で、より高回転でもシフトダウンしやすいからだ。とはいえ、一般道でもサーキットでも、不足を感じることはめったになかった。