【見事な3種のブレンド】ポルシェ・タイカン・クロスツーリスモ・ターボSへ試乗 761ps

公開 : 2021.05.11 08:25  更新 : 2021.05.14 07:40

ポルシェの純EVグランドツアラーに、オフローダーの能力とステーションワゴンのフォルムが融合したクロスツーリスモ。英国編集部が評価しました。

未来を感じるタイカン・クロスツーリスモ

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
英国の名門美大、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのビークルデザイン学科は、卒業作品展を毎年開催している。自動車メーカーでデザイナーとして活躍することを夢見る彼らの作品は、素晴らしいものばかり。

だが、アイデアの中には非現実的なものが少なくない。遠くの未来を空想しているのだろう。ワイルドなルックスは想像を掻き立ててくれるが、実現できるとは限らない。

ポルシェ・タイカン・ターボS・クロスツーリスモ(欧州仕様)
ポルシェタイカン・ターボS・クロスツーリスモ(欧州仕様)

しかし、われわれは間違いなく未来へ進んでいる。ポルシェ最新のタイカン・クロスツーリスモは、その卒業作品展に出展されているデザインのよう。2021年に発売が始まる、実在するモデルだ。

グレードは4段階あり、最新のBMW M3コンペティションよりわずかに高い価格から買える。英国では、8万ポンド(1200万円)くらいから手に入る。

一番安価なタイカン・クロスツーリスモでも、電気モーターは475psを生み出す。フェラーリ並みに目を引く存在感があり、それでいてルーフレールにキャリアを載せて自転車も運べる。今まででは考えられなかったようなモデルだ。

だが今回、初めて試乗する量産版は、穏やかな方のクロスツーリスモではない。現在8種類が存在することになったタイカンのラインナップで、トップに位置するターボS。英国価格は約14万ポンド(2100万円)に跳ね上がる。

このクロスツーリスモ・ターボSは、カテゴリー分けが難しい孤高のモデル。オーバーブースト時の最高出力は761psもあり、重心高は低く、スーパーカーのようでもある。

オフロードもこなせるグランドツアラー

だが、5段階に車高調整できる3チャンバーのエアサスを備え、4シーターか5シーターが選べる。車内は非常にラグジュアリー。上級なファミリー・グランドツアラーでもある。

さらにホイールアーチには黒いカバーが付き、ドライブモードにはグラベルが用意された。車高を持ち上げれば、相応のオフロード性能を発揮することも可能。履いているタイヤは21インチで、305/30サイズのピレリだ。

ポルシェ・タイカン・ターボS・クロスツーリスモ(欧州仕様)
ポルシェ・タイカン・ターボS・クロスツーリスモ(欧州仕様)

ルーフラインは高くなり、車内の頭上空間も余裕を増している。クロスツーリスモのサイドビューは、通常のタイカンとの違いを強調するポイントだろう。

シューティングブレークのシルエットを獲得し、リアシートを折り畳めば1171Lという広大な荷室空間が生まれる。リアシートを使える状態にしていても、BMW 3シリーズ・ツーリングの8割程度の荷室容量が確保されている。

ボディ幅は広く、荷室の開口部は位置が高く少し狭い。だが、実用性は想像以上にある。

加えてタイカンは電気自動車。2019年より以前、ポルシェには内燃エンジンを搭載しないモデルなど存在しなかったという事実には、驚かされる。

ハイテクでマッチョ。正直なところ、ポルシェ・タイカン・クロスツーリスモ・ターボSの実態は掴みにくい。

車重は2320kgもあり、軽くない。よりボディサイズが大きく、ツインターボV8エンジンを積むパナメーラ・ターボSスポーツツーリスモより185kgも重い。

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