【見事な3種のブレンド】ポルシェ・タイカン・クロスツーリスモ・ターボSへ試乗 761ps
公開 : 2021.05.11 08:25 更新 : 2021.05.14 07:40
快適性と操縦性の高次元なブレンド
その理由は、最大495kmの航続距離を与える93.4kWhの大容量バッテリー。電圧800Vのシステムを搭載し、急速充電を用いれば5%から80%の容量まで、20分で充電できるという。
クロスツーリスモの数少ないマイナスが、761psもあるクルマを運転しているという実感が薄いこと。充分に角が丸めてあり、かすかに感じ取れる程度だ。
サスペンションは、前後ともにダブルウイッシュボーン式で、エアスプリングが路面の不整を均してくれる。驚くほどコミュニケーション力に長けたステアリングと、快適なスポーツシートで、運転が心地良い。
テクニックが要求される道でも、はるかにコンパクトで軽量なモデルのように、繊細で正確に操れる。バランスの取れたシャシーと、シャープなアクセルレスポンスを活かしながら、力むことなく操舵できる。
フロント側よりパワフルな、リア側の駆動用モーターも効果的。ターボSは、アクティブ・アンチロールバーやトルクベクタリング、後輪操舵など、複雑なシャシー技術も満載している。快適性と操縦性の高次元なブレンドだ。
ただし操縦性は、スタビリティとロードホールディング性が優先。先進の技術を持ってしても、重いボディを動かすという物理学は存在する。ドライバーが活き活きと操れるタイプではない。
タイトコーナーを旋回すれば、大質量と対峙する大径タイヤという関係性が浮き彫りになる。911のような自由度は得ていない。スタビリティ・コントロールがためらうことなく介入し、ドライバーの気持ちを抑え込もうとする。
3種類の異なるクルマのタイプが融合
リアモーターが空回りしそうなら、トラクション・コントロールが予期したように立ち上がる。といっても、エアサスペンションが車高を落とすスポーツ・モードを選んでいても、グリップ力やトラクションは強大。滅多にそんな状態には陥らないのだが。
安全で速く、洗練されたタイカン・クロスツーリスモの別の魅力は、上質なクルージング・マナー。オプションの二重ガラスを選択すれば、110km/hで走行中に、車内ではひそひそ話ができるほど。
2320kgという車重は、落ち着いた乗り心地も与えてくれる。パナメーラだけでなく、多くの高性能サルーンより優れている。通常のタイカンよりも。事前に急速充電が可能なポイントを確認していれば、ロングドライブも楽しいに違いない。
タイカン・クロスツーリスモ・ターボSは実態が掴みにくい。アウディRS6アバントほど実用的ではないし、メルセデスAMG GT 4ドアクーペのように自由に振り回せるわけでもない。定員や航続距離では、テスラ・モデルXに届いていない。
筆者が一番に感じ取ったことは、ドライバーの充足感と同等の穏やかさ。スーパーカー級の特別さと、幅広い能力を併せ持っているということだ。
3種類の異なるクルマのタイプを融合させ、見事にすべてを両立させている。タイカン・クロスツーリスモは、そんなコンセプトのクルマなのだろう。
ただし、ターボSは高価過ぎて不必要なほどに速い。手頃なクロスツーリスモの方が、よりまとまりがあり、実用性や訴求力で勝るのではないかと思う。
ポルシェ・タイカン・ターボS・クロスツーリスモ(欧州仕様)のスペック
価格:13万9910ポンド(2098万円)
全長:4974mm
全幅:1967mm
全高:1409mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:2.7秒
航続距離:387-418km
CO2排出量:−
車両重量:2320kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
バッテリー:93.4kWhリチウムイオン(実容量:83.7kWh)
最高出力:761ps(オーバーブースト時)
最大トルク:106.8kg-m(オーバーブースト時)
ギアボックス:1速オートマティック(フロント)/2速オートマティック(リア)