【別格の存在感】アウディRS4アバント試乗 RSモデルのメートル原器
公開 : 2021.05.15 11:45 更新 : 2021.10.11 14:49
静止状態でもエネルギー漲る、別格の存在感
新デザインのヘッドライト、およびリアコンビランプや、新しい前後バンパーなどのほか、フロントノーズ先端には往年のアウディ・クワトロを思い起こさせるスリットを備えたエクステリアは、A4アバントより25mmワイドになる前後ブリスターフェンダーや、ほぼ車幅ギリギリにセッティングされた275/30ZR20サイズの大径タイヤ&20インチのアルミホイール、そしてブラック仕上げのディテールが、静止状態でもエネルギー漲る、別格の存在感を放つ。
インテリアは、ステアリングホイールが新たにヒーター付きとなったほか、10.1インチのタッチディスプレイを備えた最新のMMIを搭載。
RSモデルらしく手触りの良い本革スエードのステアリングやシフトセレクターレバー、織り目が美しいカーボン製パネル、ダイヤモンドステッチのレザースポーツシートなどの専用アイテムが、視覚と触覚でドライバーの気分を盛り上げてくれる。
樹脂や金属パーツの仕上げも素晴らしく、プレミアムカーとしての高級感も相変わらず申し分ない。
搭載される2.9LのV6ツインターボは、これまでどおりアウディが設計を担当したEA839型で、ポルシェ・パナメーラやカイエン、マカンにも採用されているもの。
90°に開いたバンク間に2基のターボチャージャーをレイアウトしたこのエンジンは、最高出力が450ps/5700-6700rpm、最大トルクは61.1kg-m/1900-5000rpmで、幅広いトルクバンドと7000rpmからのレッドゾーン直前まで使えるエンジンに仕立てられている。トランスミッションは8速ATだ。
走り出し、気持ちの良いRSの世界観
スタートボタンを押すと、派手な排気音とともにエンジンが目覚める。
アイドリング時から低く唸るようなサウンドを放つので、出来れば深夜早朝には自宅を出入りするのを控えたいと感じるほどだ。
しかし、一旦走り出せば、そんなことを一瞬で忘れてしまうほど、気持ちの良いRSモデルの世界に引き込まれる。
V6エンジンはハイチューンだが決して過敏ではなく、街中でも非常に扱い易い。
ステアリングフィールもしっとりスムーズで、標準装備のDRC(ダイナミックライドコントロール)付きスポーツサスペンションプラスも、不快な突き上げは無くいたって快適。普段使いの実用ワゴンとして問題なく使える乗り味である。
高速道路は、コンフォートモードでは速度や路面のうねりの状態によっては車体の上下動がおさまらない場面もあるが、オートまたはダイナミックを選べばこれも解消される。
抜群に優れた直進性はさすがの一言。
今回は都内から軽井沢方面へ、片道200km程の距離を1日で往復したのだが、疲労感はとても少なく、グランドツーリングカーとしてとても優れていると感じた。
真骨頂はワインディングロードでの走りだ。ダイナミックモードを選択して右足を深く踏み込めば、瞬時に獰猛なモンスターに変身する。
V6ツインターボは唸るような咆哮を上げ、車両重量が1820kgもあるクルマであることを忘れさせるほど豪快で伸びやかな加速を披露する。
また通常時は駆動力配分が前後40:60だが、ドライブモードと走行状況に応じて70:30-15:85に変化するクワトロ・システムと、リアアクスルに備わるスポーツデファレンシャル、そして対角線上のダンパーの油圧制御により、ピッチングやローリングの姿勢制御も実現した足まわりが、抜群に優れたスタビリティを実現。
4本のタイヤが路面を掴み続けている感覚が常にシートとステアリングから伝わって来る。またアクセルペダルを踏み込んだ瞬間には、ハンドリングもダイレクト感に溢れ、適度な手応えのステアリングフィールでタイヤと路面の摩擦状態を知ることが出来る。
RS4アバントは、他に類を見ないほど高い安心感とともに、極めて正確で安定した、それでいて圧倒的にダイナミックなコーナリングを楽しませてくれるスーパースポーツワゴンなのである。
ステアリングホイールの右側にある「RS1」、「RS2」と書かれたRSボタンには、好みの車両セッティングをメモリーすることができ、ステアリングから手を離さずに瞬時に呼び出すことが出来る。
いろいろ試して自分好みのセッティングを見つけるのも、オーナーには楽しい作業だろう。
燃費については、カタログ値ではWLTCモードが9.9km/L、市街地モードは7.1km/L、郊外モードは9.9km/L、高速道路モードは11.8km/Lとなっているが、実際に同様の印象である。
今回の走行ルートは、高速道路6割、市街地2割、郊外・ワインディングロード2割くらいで、高速道路は至って大人しく走って最終的に11.3km/Lだった。
ハイパフォーマンスモデルの小排気量化&電動化も珍しくない時代にあって、鍛え上げられたコンベンショナルな2.9L V6ツインターボの濃厚な味わいをSUVではなくステーションワゴンで楽しめるというのは、今やとても贅沢なことなのかもしれない。