【じっくり見る】フェラーリSF90スパイダーは買いか 最強PHEVスパイダーの真価

公開 : 2021.05.03 22:03  更新 : 2021.10.11 10:56

パワートレインは共通

SF90スパイダーのパワートレインは、SF90ストラダーレと共通だ。

ミドに積まれる新開発の4L V8ツインターボは、新設計の燃焼室とセンターインジェクションを採用し780psを発揮。

フェラーリSF90スパイダーのフロントラゲッジ。
フェラーリSF90スパイダーのフロントラゲッジ。    上野和秀

電動モーターは左右の前輪に1基ずつと、リアはエンジンとギアボックス間に1基が配され、3基合計で162kW/220psの最高出力を発揮。システム合計で1000psに達する。

エンジンには8速デュアルクラッチ・ギアボックスが組み合わされ、リバースは前輪の電動モーターが担当するため機械的なギアは備わらない。

駆動方式は前輪を電動モーターが駆動するオンデマンド4WDとされ、トルクベクタリングが行われることにより最適なトラクションと操縦性を実現。

Eドライブ・モードを選べば電動モーターだけで25kmの走行が可能で、住宅地で早朝深夜の出入りに役立つ。

動力性能は最高速度340km/h、0-100km/h加速2.5秒はSF90ストラダーレと変わらないが、0-200km/h加速は0.3秒増しの7.0秒となる。

アセット・フィオラノも選択可能

サーキット走行車両として機能を極限まで高めたいオーナーに向けて、サーキット用のセットアップが施される「アセット・フィオラノ」がラインオプションで用意されている。

その内容は、サーキット走行に最適化されたダンパーと、ハイダウンフォースを発生させるカーボン製リアスポイラー、Sタイヤといえるミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2で構成。

このほかカーボンとチタンを各部に用いて21kgもの軽量化が施され、運動基礎性能を高めている。アセット・フィオラノ・パッケージの価格は631万4000円となる。

日本価格、納車時期について

気になるSF90スパイダーの日本における基本価格は5856万円。

ベルリネッタのSF90ストラダーレに比べ、516万円高となる。すでに受注を開始しており、デリバリー時期は今年末からを予定しているという。

フェラーリSF90スパイダーの内装。
フェラーリSF90スパイダーの内装。    上野和秀

フェラーリのオープンモデルと比較すると、812 GTSの4523万円、F8スパイダーの3657万円の上に位置することが分かる。

現在購入できるハイブリッドのスーパースポーツは、少量生産のハイパーカーを除くと、フェラーリSF90のほかマクラーレンアルトゥーラ、ホンダNSX(2020年モデルの日本仕様は終売)の3択と言える。

分かり易くパワーと価格で比べるとSF90スパイダーが1000ps/5856万円、アルトゥーラは680ps/2965万円、NSX(2020年モデル)が582ps/2420万円と、SF90のパフォーマンスと高価さが際立つ。

しかし、数億円したラ フェラーリを上回るパフォーマンスを備えることを考えれば、SF90はあながち高いとは言えまい。

また、このカテゴリーはカスタマーがそれぞれのブランドへのこだわりがあるだけに、一般車のように単純に価格やパワーだけで決められないものがある。

SF90スパイダーは「買い」か

視点を変えてリセールバリューで検証してみよう。

SF90は購入額こそ大きいが、フェラーリというブランド力の高さと流通数の少ないPHEVという希少性から、売却時の残価の高さが期待できる。

フェラーリSF90スパイダー。
フェラーリSF90スパイダー。    上野和秀

フェラーリの値落ちの少なさを示す具体的な例を挙げると、10年落ちの458イタリアが認定中古車では今も新車時本体価格の8割強。458スパイダーは、3000万円以上のプライスタグが付くという事実がある。

また458スパイダーからRHTが採用され、販売台数がそれまで主流だったベルリネッタと逆転した。

その流れは現在も続いており、SF90でもスパイダーが人気になることが予想される。

こうした流れからSF90でも、スパイダーがベストバイといえよう。手放すときの値落ちもミニマムで済むことを考えれば「買い」の1台といえる。

ただし、手にするのは簡単ではない。現在SF90は世界中からオーダーが殺到し、フェラーリを複数台購入した実績あるカスタマーでも、納車まで1年半以上も待つ必要があるという。

極みの1台は簡単には手に入らないようだ。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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