【ホットクロスオーバー対決】前編 背の高いホットハッチ 広くて速い ただし価格も高い

公開 : 2021.05.08 11:05  更新 : 2021.07.12 18:48

装備は充実、ただし高価

エクステリアの演出も似通っている。バンパーの開口部には周囲を威圧するようにラジエーターがのぞき、クラッディングを備えたホイールアーチいっぱいに収まるマンホールカバーのようなホイール越しにブレーキが光る。擬人化するなら、ヤンチャした過去が隠しきれないマイホームパパといったところか。

また、どちらも価格は高く感じられる。ティグアンRは5万ポンド(約700万円)弱で、GLB 35は5万ポンドを超える。多面的なクルマだとはいっても、なかなかの値付けだ。ちなみに、390psのV6を積むメルセデスAMGのC 43ステーションワゴンは、5万3000ポンド(約742万円)をわずかながら下回る。

EA888型2.0L直4ターボは、最高出力320ps/5200−6600rpm、最大トルク42.9kg−m/2100−5300rpmを発生。0-100km/hは4.9秒だ。
EA888型2.0L直4ターボは、最高出力320ps/5200−6600rpm、最大トルク42.9kg−m/2100−5300rpmを発生。0-100km/hは4.9秒だ。    LUC LACEY

上級モデルと接近したメルセデスの値付けは、フォルクスワーゲンよりも大胆だと思えるだろう。英国へ導入されるGLB 35は、最上位グレードのプレミアムプラスのみで、2面併設の10.3インチディスプレイや、必要以上といえそうな装備が与えられている。

3列シートのGLB 35

金属調プラスティックの装飾だけでなく、マテリアルにもレイアウトにも、AMGのキャビンはプレミアム感や豪華さが感じられる。

フォルクスワーゲンのアルカンターラを張ったセミバケットに比べると、シートはちょっとばかり平凡で、両ももをかなり熱心に押し付けるが、室内のそれ以外の部分は、長距離ドライブを快適なものにしてくれる。

GLB 35のインテリアはプレミアム感のあるものだが、ややデコラティブにすぎるようにも思える。
GLB 35のインテリアはプレミアム感のあるものだが、ややデコラティブにすぎるようにも思える。    LUC LACEY

エルゴノミクスの点では、シート関連のトリックが、エキゾーストの上に隠されている。3列目シートだ。ほぼどの角度から見ても不格好な獣のようだが、スクエアなルーフラインの下には、子どもふたりが座れる折りたたみシートを含めて7人が過ごせる空間が用意されているのである。

2列目シートの広さに関しては、どちらのクルマも否定のしようがない。大人3~4名で乗る機会が日常的にあるなら、後席の同乗者たちは、ドライバーがゴルフRやA 35ではなくこれらのクロスオーバーを選んだことに感謝したくなるはずだ。

どっちつかずのティグアンR

対照的に、ティグアンRは広く開放的に感じられることが話をややこしくする。高く座らされる感覚はSUVなら当然だが、パフォーマンスカーとしては歓迎できない。とはいえ、ティグアンRはそのふたつを両立しようと目論むクルマなのだ。

おそらく、GLB 35のあとだと統一感がないように感じられる理由はそこにある。GLBも広々としているが、シートにはもっと低く座らされる感覚がある。これはずんぐりしたダッシュボードにも一因はあるが、ずっと円熟した乗用車的な雰囲気がこちらでは味わえる。

アップライトに座らされるティグアンRのコクピット。インテリアはややプラスティッキーさが気になる。
アップライトに座らされるティグアンRのコクピット。インテリアはややプラスティッキーさが気になる。    LUC LACEY

ティグアンRのドライビングポジションは、奇妙なほどアップライトで、実用車的なセレクターレバーをはるかに見下ろすような感覚だ。大きく突き出したシフトパドルなど速く走るための装備は、このアーキテクチャーの中にあっては矛盾を覚える。

想像してみてほしい、白いテーブルクロスとマホガニーの椅子が、マクドナルドの店内に置かれている光景を。違和感がないわけがない。ティグアンのプラスティッキーなインテリアにあっても、同じようなことが起きている。

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