【抜群のシャシー性能】アウディRS Q8試乗 驚異のコーナーリング
公開 : 2021.05.21 05:45 更新 : 2021.10.13 15:26
巨大タイヤ感じさせぬ乗り心地
期待したとおり、いや期待した以上の快適性だった。
RS Q8のアウディ・ドライブ・セレクトでコンフォート・モードを選んで街中を走り始めると、そのソフトな乗り心地はノーマルのQ8とまったく変わらないほど。
ゴツゴツしたショックが足まわりから伝わってくることは一切なく、まるで路面の凹凸をすべて削りとってしまったように思えるくらい滑らかな乗り心地が味わえる。
それでいてボディは穏やかにフラットな状態に保たれていて極めて快適。ロードノイズがごく小さいのもQ8と同じ傾向だった。
「まあ、Q8と基本が同じなのだから、このくらいできるよなあ」ともいえるが、RS Q8に装着されていたのは295/35R23という超大径タイヤ。
わたしが日本で試乗したノーマルのQ8もタイヤサイズは285/40R22だったが、Q8のベースとなるプラットフォームのMLB evoにはここまで大サイズのタイヤを履きこなせるポテンシャルがあったのかと、驚くばかりである。
RS Q8の快適性は高速道路でもまったく変わることがなかった。
市街地と同じコンフォート・モードのままでもピッチングをピタリと抑え、フラットな姿勢を保ったまま矢のように突き進んでいくRS Q8は、グランドツアラーとしても優れた資質を備えているとみた。
アウディといえば、少し前まではアダプティブ・クルーズコントロールやアクティブ・レーンキーピングなどの制御がやや雑だったが、その辺も最近は大幅に改善されている。
あとは、軽く操舵しているつもりでも頻繁に警告を発するステアリング入力検出の制御がもう少し熟成されれば、さらに快適性は高まることだろう。
まさに驚異のモンスターSUV
車重2.4t、全高1700mmのSUVでワインディングロードを走ったとしても、大した喜びは得られないと考えるのが自然だ。
たとえそれが600psのパワーと81.6g-mのトルクを有していても、そのパフォーマンスを持て余すばかりでまともに走れるはずがない。
そんなふうに想像したくなる気持ちもよくわかる。
アウディRSモデルのことをよく知っているつもりの自分でも、正直、あまり多くを望まずに箱根の峠道をRS Q8で走り始めたのだが、これがまた驚きの連続だった。
さすがにコンフォート・モードではボディの挙動が大きくて素早いコーナリングは難しいが、オート・モードもしくはダイナミック・モードを選べば強力なダンパーに支えられて無駄な動きがぐっと減り、レスポンスのいいハンドリングが楽しめる。
しかも、こんなときには23インチのタイヤがソリッドな反応に終始し、まったく不安を覚えない。
サスペンションの動きにあいまいな点が一切見られない点も嬉しい。
車重の重さは感じなくもないが、コーナリングフォームに腰高なところがなく、四輪のタイヤがイン側からアウト側までまんべんなく接地しているように感じられる点も頼もしい。
おそらく、スタビリティコントロールの類いは精緻な制御を始終おこなっているはずだが、そんなところを一切感づかせないあたりもRS Q8の美点として指摘しておきたい。
もちろん、コーナリング性能だけをとればRS Q8より優れたスポーツカーはいくらでもあるだろう。
ただし、快適性とのバランスという面でいえば、このRS Q8のシャシー性能にかなうプレミアムカーは滅多にないはずだ。
ちなみにRS Q8はニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで7分42秒253をマークし、ニュル最速SUVのタイトルをメルセデスAMG GLC63 Sから奪い取ってみせた。
まさに驚異のモンスターSUVといって間違いないだろう。