【レジェンドのツートーン】ブガッティ・タイプ59 白と黒のグランプリレーサー 前編

公開 : 2021.05.23 07:05

タイプ59に強く惹き込まれてしまった

その後、タイプ59はレーシングカラーに復元される。現在のオーナー、工業デザイナーとして活躍するマーク・ニューソンが、シャシー番号59124を見事な状態に復元する決意をした。しかし以前は、ワークスカラーのブルーにこだわっていたという。

筆者も、子供の頃からモノトーンに塗り分けられたタイプ59のファンだった。モデルカーを買っては、クレイグのツートーンに塗って楽しんできた。そんなわたしの夢の1つが、クレイグのカラーリングで実物大のタイプ59を見ること。

ブガッティ・タイプ59(1933〜1936年)
ブガッティ・タイプ59(1933〜1936年)

今回ご紹介するのは、ブガッティの専門家として活躍するチャールズ・ニル・ジョーンズの手で、素晴らしいツートンカラーに仕上げられたタイプ59。オリジナルとは別のタイプ59だが、筆者の夢のクルマが目前にある。

ニル・ジョーンズのタイプ59に対する強い思いは、ロックミュージシャンのニック・メイスンが所有するクルマに関わったのがきっかけだった。「ニックの妻のために、彼のレーサーの部品を利用してタイプ35のリビルドをしたのが始まりです」

「1996年にリチャード・イアンソンが営んでいたブガッティの専門ガレージ、トゥーラ・プレシジョンで作業を進め、仕上げたんです。そこに3台のタイプ59があり、すっかり惹き込まれてしまいました」。ニル・ジョーンズがその頃を振り返る。

「10年後にイアンソンから電話があり、トゥーラ・プレシジョンの売却を聞きました。わたしに事業を買い取って欲しいと。ニックもブガッティの面倒を見続けて欲しいと話していて、トゥーラ・プレシジョンを引き継ぐことにしたんです」

ガレージ移転のために自らのT59は売却

モーガンとアミルカーを売却し、ガレージを購入。修復途中のタイプ59に加えて、大量の図面や多くのパーツも受け継ぎました。かわいい子ども用のライドカー、タイプ52のベイビー・ブガッティも」

ニル・ジョーンズは、ブガッティ・タイプ59のスペシャリストの1人となった。現在ではブガッティの部品を復元し、世界中へ供給してもいる。

ブガッティ・タイプ59(1933〜1936年)
ブガッティ・タイプ59(1933〜1936年)

レストアを引き受ける傍ら、ニル・ジョーンズは2006年に自らのクルマの制作を開始する。「専門家のジーノ・ホスキンズが製造したシャーシとスプリングをベースとしたものでした」

「わたしのブガッティ・タイプ59が完成したのは2015年。情熱的に仕上げました。仕事のレストアで部品を復元する際、自分のクルマ用に少し余分に作ることも。プレスコット・ヒルクライムに数度参戦し、ヴィンテージ・モントレーにも出展しています」

「しかしトゥーラ・プレシジョンの移転が必要となり、資金を工面するために売却せざるを得ませんでした。フランス人のもとへ嫁いだそのタイプ59は、今でも面倒を見ています」

自身のタイプ59を売却した後も、顧客のためにブガッティのレストアやメンテナンスは続いた。スネッタートン・レースではニル・ジョーンズ自らがステアリングを握り、タイプ35やタイプ51に競り勝っている。

「ポールポジションは楽に取れました。古いレーサーなので、良いところと悪いところを確かめるのも目的です。タイプ59はストレートで速く、3周目では前のクルマをアウトから追い越せるほど。最後の4周は、かなりのデッドヒートでしたね」

この続きは後編にて。

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