【人気だけが理由ではない】日産ノート/キックス eパワー専用車になったワケ
公開 : 2021.05.15 05:45 更新 : 2021.10.22 10:07
eパワーには優れた動力性能や運転の楽しさも
価格が高いのにハイブリッド比率が増えた背景には、合理化以外にも複数の理由がある。
1番に挙げられるのは、環境/燃費性能が優れていることだ。購入後の燃料代が抑えられるだけでなく、購入時の税額も安くなるから、ハイブリッドの割高感もある程度は解消される。
そして走行性能の向上も大切な魅力だ。
とくにeパワーの場合、エンジンは発電、モーターは駆動を担当するから、運転感覚は電気自動車に近い。モーターはアクセル操作に対して動力性能を機敏に増減させ、加速は滑らかになって静粛性も優れている。
またエコやSモードを選ぶと、アクセルペダルを戻すと同時に、減速エネルギーを使った発電が活発におこなわれる。そのためにアクセル操作により、速度を幅広く調節できる。
このブレーキペダルをほとんど使わない運転感覚は、ユーザーによって好みが分かれるが、eパワーの個性として注目されている。
以前はハイブリッドの魅力といえば、モーター駆動を併用することで燃料消費量を節約できることだった。
それが最近は、動力性能、静粛性などの快適性、さらに運転の楽しさにまで多様化してきた。
その結果、1年間の走行距離が少ない(つまり燃費節約の効果が乏しい)ユーザーもハイブリッドを選ぶようになり、ノートやキックスはeパワー専用車になった。
ノートが予算オーバーのユーザーには?
先代ノートのeパワー比率は、前述のとおり75%であった。
したがって残りの25%は、ノーマルエンジンが販売されていた。eパワーが人気のメカニズムになったことは理解できるが、ノーマルエンジンを廃止した弊害は生じていないのか。
2021年1~3月のノートの登録台数は、1か月平均で9377台だから、ヤリス(ヤリス・クロスとGRヤリスを除く)の1万820台を下まわった。
仮にノートに160万円前後のノーマルエンジン車があれば、ヤリスの登録台数を上まわったのではないか。
そして先代ノートでは、法人ユーザーを含めて、ノーマルエンジン車が多量に保有されている。
この乗り替え需要に、どのように対応するかも課題だ。
先代ノートのノーマルエンジン車は150~160万円だったから、200万円を超えるeパワーの現行型に乗り替えるとすれば、大幅な値上げになってしまう。
日産のコンパクトカーにはマーチも用意され、この売れ筋グレードは130~150万円だ。先代ノートのノーマルエンジン車からの乗り替え候補に適するが、マーチは発売から10年以上を経過して、内外装の質感や乗り心地に不満が伴う。
売れ行きも落ち込み、2021年1~3月の1か月平均登録台数は1036台だ。ノートのわずか11%にとどまった。
そこで販売店にノートのノーマルエンジン車の廃止について尋ねた。
「先代ノートのノーマルエンジン車を使うお客さまは、法人も含めて、eパワーの新型では予算をオーバーする。そこで軽自動車のデイズやルークスを推奨している」
「デイズの標準ボディであれば、価格は130~140万円だから、先代ノートのノーマルエンジン車よりも少し安くマーチと同程度だ。安全装備はマーチよりもデイズが先進的で、160万円少々の上級グレードになれば、エアロパーツと運転支援機能を備えるハイウェイスターXプロパイロットエディションも選べる」
「今はコンパクトカーから軽自動車に乗り替える抵抗感も薄れたから、デイズやデイズ・ルークスを推奨している」
このような事情もあり、2021年1~3月に日本国内で販売された日産車の内、40%以上を軽自動車が占めた。