【深い味わいを求めたい】マセラティ・ギブリ・ハイブリッド・グランスポーツへ試乗
公開 : 2021.05.21 08:25
トルクフルで低回転域からレスポンシブ
トランスミッションは8速ATで、駆動輪はリアタイヤのみ。エンジンは6500rpmまで気持ちよく吹け上がり、アクセルペダルの開度が小さい時はとても静か。低速域では唸るようなノイズが少し響くが、回転数を速めればほかのノイズにかき消される。
6気筒ユニットのように、マセラティらしく聞き惚れるサウンドを放つことはない。しかし、ISGと電動スーパーチャージャーが機能する低回転域からレスポンシブ。とても良く働くドライブトレインだ。
最大トルクは4000rpmの45.8kg-mだが、ずっと低い回転域から力強い加速が得られる。自ら8速ATのギアを選ぶことも可能だが、一般道では豊かなトルクで必要になる機会は少ない。
ドライブモードをスポーツにすれば、低めのギアで回転数を引っ張るように設定が変化。サウンドのボリュームも増すが、一度クルージング状態になるとノーマル・モードへ戻ってしまうようだ。
燃費は、高速道路を穏やかに運転していれば14.2km/Lくらいには届く。市街地など複合的な条件なら、10.6km/L程度だろう。
改善された前後の重量バランスで、アナログなドライバーズサルーンとしての実力が向上したことを期待するかもしれない。より良くチューニングすれば、結果は導かれそうだ。本来の素質は高く、ドライバーズカーとしての可能性を垣間見れる。
ところが、真にスポーティなエグゼクティブ・サルーンにまでは迫りきれていない。身のこなしやドライバーとの一体感は、期待に届いていない。
抜けられなくなる深い味わいを求めたい
アルファ・ロメオ・ジュリアは、どうあるべきかを的確に表現できている。ひと回りボディは小さく、豪奢さでは及ばないけれど。
エグゼクティブ・サルーンとして操縦性は中庸で、ステアリングホイールを回してもタイヤは向きを変えるだけ。手応えは薄く、重みを増していくようなこともない。オイルのような滑らかさがあるわけでもない。
乗り心地は穏やかで、姿勢制御は優れている。ダンパーは引き締めることもできるが、我慢を強いるほどではない。快適性は十分に高い。
マセラティがギブリをどう仕立てたかったのか、いまひとつ掴みにくい。少し個性の足りないドライバーズカー、といった印象を受けてしまう。英国価格は5万8500ポンド(877万円)から。金額的に、快適以外の何かを求めてしまうことは事実だ。
筆者の知人の1人は、マセラティ・ギブリにしばらくの間乗っていた。何か新しい、主流ではないモデルを試したいと考えていたからだ。ギブリは、彼の嗜好に丁度合っていたのだろう。
だからこそギブリには、不足ない芳醇さを求めたい。一度味わえば、抜けられなくなるような深い味わいを。
マセラティ・ギブリ・ハイブリッド・グランスポーツ(英国仕様)のスペック
英国価格:6万5100ポンド(976万円)
全長:4971mm
全幅:1945mm
全高:1461mm
最高速度:254km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:10.4-11.8km/L
CO2排出量:192-216g/km
車両重量:1950kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccターボチャージャー+電動スーパーチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:329ps/5750rpm
最大トルク:45.8kg-m/4000rpm
ギアボックス:8速オートマティック