【Rのすべてを解放する】フォルクスワーゲン・ゴルフR パフォーマンスへ試乗
公開 : 2021.05.18 08:25 更新 : 2022.08.08 07:31
VW最強ホットハッチのゴルフRの戦闘力をさらに高める、パフォーマンス・パッケージ。安くはないものの、訴求力の高いオプションといえそうです。
是非モノといいたくなるオプション
既にフォルクスワーゲン・ゴルフRの試乗評価は、AUTOCARで何度か実施済み。ただし、いずれも充実した装備で整えられた、標準仕様のRだった。
今回試乗したのは、ゴルフRのパフォーマンス・パッケージ仕様。いってしまえば、ただのオプション装備車ではある。だが英国価格2000ポンド(30万円)のこのオプションは、是非モノといいたくなる内容なのだ。
モノとして手に入るのは、19インチのエストリル・アルミホイールに、GTIクラブスポーツと共通の大きなリアウイングなど。加えて、選んだオーナーだけが味わえるドライビング体験の進化が付いてくる。
まず最高速度は、標準のゴルフRから20km/h増しの270km/hになる。ドイツ以外に住むオーナーの場合、実際に試せる人は限られていると思うけれど。日本のホンダ・シビック・タイプRは、さらに2km/hくらい速いのだが。
2.0L 4気筒ターボエンジンの最高出力は320psと変わらず、トルクベクタリング機能付き四輪駆動システムにも変更はない。しかし、新しい2つのドライビングモードが付加される。これが、ゴルフRの動的特性に本当の違いを生んでいる。
追加されるドライビングモードの1つが、2021年らしくドリフト・モード。左右にクラッチが内蔵された新しいデュアルクラッチ・リアアクスルを制御し、エンジンの発生するトルクの最大50%をコーナー外側のリアタイヤへ分配してくれる。
ドリフトとスペシャルの2モード
目一杯アグレッシブに運転している場面で有効な機能だから、一般道で試すような設定ではない。でも一度サーキットへ持ち込めば、とても効果的なことは間違いない。
コーナーでわずかな荷重移動を加えれば、ゴルフRはパワー・オーバーステアを維持してくれる。突き詰めていくと、BMW M2コンペティションのような本物のFRには及ばない。でも、ひたすら楽しいことに違いはない。
さらに注目すべきモードが、スペシャルと呼ばれるもの。基本的には、フォルクスワーゲンがニュルブルクリンクのタイムアタックで用いた設定だ。8代目ゴルフRの開発の一環として走行し、優れた先代より19秒も速く周回できたという。
内容は簡単にいうと、すべてが最大に引き上げられるモード。唯一、コンフォートを維持するダンパーを除いて。
スロットル・マッピングも容赦ない。アクセルペダルの踏み初めはマッピング特性を穏やかにし、低速域での扱いやすさを残してくれるのが通常。ところがスペシャルでは、最もシャープな反応を求めて、そんな気遣いも排除される。
トランスミッションをマニュアル・モードにしている場合、回転数がレッドラインに当たっても、自動的にシフトアップしなくなるのもポイント。フォルクスワーゲン製の量産モデルとしては初めてだ。
とても素晴らしい設定だといえる。ゴルフRをずっと魅力的なクルマに感じさせてくれる。筆者は、なぜ標準装備されないのか不思議に思うほど。