【架空のヒロンデルを実写に】ボルボP1800とC70、ジャガーXJ-S、インターセプターIII 前編

公開 : 2021.05.29 07:05

2代目ヒロンデルは白いジャガーXJ-S

放映から22年後、ウェールズ北部に住む紳士からP1800の現オーナー、ケビン・プライスが連絡をもらう。有名なボルボの1台を所有しているという話しだった。クルマの足跡をたどると、以前は71 DXCのナンバーだったことが判明する。

1997年、ケビンはそのクルマの購入を決心。10年以上をかけて、必要な部品をかき集めて丁寧にレストアを進めた。2012年の英国クラシック・モーターショーで発表されると、このP1800は大きな話題を呼ぶことになった。

ジャガーXJ-S(HE型以前/1975〜1980年)
ジャガーXJ-S(HE型以前/1975〜1980年)

ロンドン特捜隊スウィーニーというTV作品には、フォード・コンサルGTが登場する。それと同じく、子供の頃に見ていたクルマが復活したことへ、多くの大人が喜んだのだ。

続いて、ディレクターのベイカーは「セイントの息子」という仮タイトルで続編を企画。俳優のイアン・オギルビーが主役のサイモン・テンプラーを演じるテンプラー・シリーズ、「リターン・オブ・ザ・セイント」へ展開する。

前作の成功を知ってか、続編ではジャガーは車両提供へ積極的だった。ビッグクーペのXJ-Sと、ブリティッシュ・レイランドの評価を高められると考えたのだろう。

最初に作品に登場したのは、真っ白なボディに仕上げられた1975年製のMT車。ジャガーの工場で作られた138台目で、テスト車両として用いられていたクルマだった。

白いXJ-SにはPWK 530Rのナンバーが付けられた。シリーズの放映は1978年9月10日からが予定されており、ジャガーは最新の仕様へ合うように見た目へ手を加えている。

TVドラマのファンが大切に乗るジャガー

セイントが駆るヒロンデル「ST 1号」へ相応しいように、電動のサンルーフと無線電話を搭載。運転する楽しさを、オギルビーは当時のAUTOCARへのインタビューで触れている。「動的性能と素直さで、極めて扱いやすいクルマです」

ドラマの制作陣は、ディーラーから2台のバックアップ車両も受け取った。1台は英国での撮影用、もう1台はイタリアでの撮影用に準備された。

ジャガーXJ-S(HE型以前/1975〜1980年)
ジャガーXJ-S(HE型以前/1975〜1980年)

ジャガーXJ-Sは主演のオギルビーと同じくらい、ヒロンデルの役にぴったりだった。だが国をまたぐミステリーとして、やや斜陽な内容でもあった。いくつかのエピソードは平均以下といえるほど。

XJ-Sはトラブルにも悩まされた。「壊れっぱなしで、セットに手押しで運ばれてくることも多かったですね」。とオギルビーが後に回想している。

そんな白いXJ-Sは撮影が終わると消息を絶つが、1993年に発見。今でも道路を走れる状態が保たれているそうだ。

今回ご登場願ったXJ-Sは、「リターン・オブ・ザ・セイント(聖人の帰還)」のファンでもあるチャールズ・ポーターが大切にしている別のジャガー。走行距離4万1800kmと、まだ距離の短い1979年式だ。

続編の最初のエピソードに、当時14歳だったポーターは大きな影響を受けたという。「コーギーのミニカーだけでなく、1979年式のXJ-Sも買ったんですからね」。実物大の白いXJ-Sを、7年前に購入したというわけ。

1970年代のTVドラマ・ファンでもある彼は、ニュー・アベンジャーズという作品も愛している。結果、番組に登場するトライアンフTR7も所有している。

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