【詳細データテスト】プジョー508 駆動系は円滑 しなやかな足回り 加速とEVレンジはイマイチ
公開 : 2021.05.15 20:25 更新 : 2021.07.08 12:58
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
複数のモーターを用いる508PSEのハイブリッド・パワートレインは、数年前に作られた308の実験車両に近いものだ。ただし、モーターとバッテリー、エンジンのパフォーマンスカーとしての使い方における制限や力強さの出しかた、重量と熱の扱いなどに多くの違いが見出せる。
もっとも、これはプジョーに限ったことではない。同じような開発を行ったメーカーならば、どこでも経験したはずの変更だ。
308ハイブリッドRがそうだったように、508PSEもフロントに横置きした1.6L直4ターボをメインのパワーソースとして使用し、そのエンジンを前後アクスルに設置された電気モーターがアシストする。フロントのモーターは、エンジンと8速ATとの間に挟まれるかたちで搭載され、リアのモーターはリダクションギアを介して後輪を直に駆動する。
前後とも110ps程度というモーター出力は308ハイブリッドRと同等だが、エンジン出力は270psから200psへダウンしている。フロントモーターは前輪の動力源としてパワーが出ればいいというものではなく、市販化にあたってはジェネレーターとしても用いるためのマージンが必要となる。そのため、電力系に悪影響を及ぼす発熱の量を減少するべく、出力を下げる必要があったのだろう。
出力のピーク値は、単純計算すれば400psを超えるはずだが、システム出力としては360psにとどまる。システムトルクの上限も53.1kg-mと、エンジンとモーターの総計には及ばないが、たったの500rpmから4760rpmまでの広い回転域でこの値をキープできる。
ピークパワーを制限しているものは、リチウムイオンバッテリーのキャパシティだ。11.5kWhの容量は、WLTC値で42kmの航続距離をマークするが、モーター2基で同時に出せる出力は160psにとどまる。しかも、その上限値を発揮できるのはスポーツモード選択時だけだ。
それでも、たった3kWhで、電力をすぐに使い果たす308ハイブリッドRより力強さは増している。また、308ベースのプロトタイプは明らかに熱のマネージメント面で問題を抱えていた。とはいえ、パワーウェイトレシオに関しては、近いクラスのライバルに対して競争力のあるレベルだった。もっとも、期待するほどずば抜けたものではないのだが。
プジョースポールは、508のサスペンションに、いつもながらの手を加えている。前後ともトレッドを拡大し、ダンパーやスプリング、スタビライザーのセッティングを見直し。さらに、電動パワーステアリングを再チューンするとともに、新たにアダプティブダンパーとアルコン製のフロントブレーキを採用し、20インチホイールとミシュラン・パイロットスポーツ4Sで足元を固めた。
508PSEには、セダンとSWことワゴンが設定される。今回テストしたSWの公称車両重量は1875kgで、軽くはないが絶望的なほど重いわけでもない。本格ハイブリッドではないBMW M340i xドライブ・ツーリングを130kg上回るだけだ。テスト車の満タンでの実測値は1892kgだった。