【詳細データテスト】プジョー508 駆動系は円滑 しなやかな足回り 加速とEVレンジはイマイチ

公開 : 2021.05.15 20:25  更新 : 2021.07.08 12:58

走り ★★★★★★★☆☆☆

508PSEのパフォーマンスには、ふたつの側面がある。ひとつには、実測0−97km/h=5.7秒、公称0-100km/h=5.2秒という加速性能に表れている。

BMW M340i xドライブ・ツーリングやメルセデスAMG C43ステーションワゴン、アウディS4アバント、ボルボV60ポールスター・エンジニアードといったライバルが5秒を切るのに比べると、見劣りしてしまう。その点では、前輪駆動で速めのホットハッチ以上、ライバル未満といったところだ。

直線加速はライバルに劣り、トランスミッションは機械任せを強いるプログラムだ。しかし、エンジンやモーターの使い分けはみごとで、シングルスピードのEVのように、手軽に速く走ることができる。
直線加速はライバルに劣り、トランスミッションは機械任せを強いるプログラムだ。しかし、エンジンやモーターの使い分けはみごとで、シングルスピードのEVのように、手軽に速く走ることができる。    LUC LACEY

われわれの持つデータに照らせば、発進加速は3万5000ポンド(約490万円)を切るホンダシビック・タイプRやフォード・フォーカスSTと同等だ。5万5000ポンド(約770万円)級で、パワーソースが3つもあるうえに4WDも備えることを考えれば、オーナーはそれ以上の性能を期待するところだろう。

この直線加速の不足は、8速ATの性質によるものだ。変速は電光石火とはいわないまでも適度に効果的で、とはいえ操作面でドライバーに提供してくれるものはあまりない。たとえば、マニュアルモードに固定することができない。

パドルで手動変速すれば受け付けるが、ほとんどすぐに、ギアボックス自体のプログラムに合わせてギアを選び直してしまう。結局、完全にオートマティックなクルマのように、機械任せで走らざるをえないのだ。

また、ブレーキペダルのフィールにも言及しておかねばなるまい。アルコン製ブレーキを専用装備するにもかかわらず、踏み心地が曖昧で、コミュニケーションが足りない。床まで踏み込むのがデフォルトの緊急ブレーキテストのときでさえそうなのだ。

ただし、ブレーキ自体はかなり効く。ハイスピードからの完全制動も、ドキドキするようなことはほぼなく、遅れもない。

とはいえ、悪いことばかりではない。もうひとつの面は、プジョーの現行ラインナップでもっともホットなモデルでありながら、現実的な環境で苦もなく楽しく飛ばせるのである。

まるでシングルスピードのピュアEVのように扱えるが、まさにそういうフィールなのだ。ふたつのモーターのうちでは、リアのそれが優先して動き出すが、スロットルペダルの踏み加減によってフロントモーターも加わり、ふたつが協調して瞬発的な推進力を生み、トランスミッションが適切なギアを選んでいればトルクに満ちた穏やかな走りをみせる。

さまざまなドライブラインの要素を使ったりやめたりするマナーはすばらしく巧みだ。先に述べた点は別だが、それ以外では直感的でレスポンスがよく、なかなか有能なパワートレインを、ドライバーは意のままに使える。

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