【レースの裏側】サーキットの作り方 設計者に聞く重要ポイント5選 なぜランオフエリアは〇〇なのか?

公開 : 2021.05.16 06:05

4. ターゲットに合わせたデザイン

「『F1サーキットを作りたい』というクライアントがいたら、まずその理由を尋ねます。多くの場合、彼らはF1の下に別のレベルのモータースポーツがあることを知らないのです。節約のためではなく、より多くのメリットを生むための布石を打つのです」

「わたし達の仕事の制約はFIAによって定義されていますが、クライアントが誰であるかによって、アグレッシブになることもあれば、そうでないこともあります」

同社はラリークロスやモトクロス用コースも数多く手掛けている。
同社はラリークロスやモトクロス用コースも数多く手掛けている。

「グレード3のサーキットを設計するということは、事実上F3のために設計するということです。ただ、F2用に設計されたグレード2のサーキットや、F1用に設計されたグレード1のサーキットよりも、グレード3のサーキットの方が、例えばポルシェ911で走るにはエキサイティングであると言えます」

「F1向けにコースを作る場合、普通の人がエキサイティングに感じるようにするのは難しいのです。なぜなら、他のクルマではできないことができるF1マシンに最適化されたサーキットになるのですから」

5. ランオフエリアについて

「2004年にドバイ・オートドロームを建設したとき、ランオフにはアスファルトしか使わないというFIAの理論を適用した最初のサーキットとなりました。その結果、クルマだけでなくバイクにとっても非常に安全であることが証明されました」

「しかし、ランオフエリアがこれほどまでに話題になるとは予想もしていませんでした。当時、ドライバーが持っていた技量は、ラインから外れるとダート、芝、グラベルのいずれかに侵入してしまうようなコースを何年も走ってきたことで培われたものでした。しかし今では、ランオフエリアが大幅に拡大された環境で育った世代のドライバーが増えています」

ドバイ・オートドローム
ドバイ・オートドローム

「常設サーキットを作るのであれば、レースは必要だと思っています。レースは、人々にサーキット走行をしたくなる(レンタルしたくなる)ような魔法をかけてくれるからです」

「普通のドライバーは、レーシングラインがどこにあって、どこでブレーキを踏めばいいのかわからないでしょう。高価なスーパーカーが砂利に突っ込んでしまったら、たいていは修理代が高くつきますが、アスファルトのランオフエリアに入り、止まって埃を払ってからコースに戻ったとしても、多少恥ずかしい思いをするだけで済みます。興味深い二面性を持っているのです」

「一方では、純粋なモーターレースがあり、乱暴な走りを罰するメカニズムが必要とされます。しかし、これが商業的な事業であれば、何百万ドルものクライアントの投資を回収するのを助けようとしているわけですから、わたしは常にアスファルトを選ぶべきだと思います。FIAは現実的に、グラベルの使用を再び奨励していますが、それは適切な場所での使用に限られます」

「サーキットの限界は管理されなければなりません。ドライバーに責任を負わせて、『乱暴に走ったら、その分のタイムを課す』というのは、とてもシンプルなルールです。これに対して『FIAは独裁的すぎるのではないか』という意見もありますが、そんなことはありません。ゲームのためのルールなのです。ドライバーは、悪いことをすれば校長先生に叱られるということを理解しなければなりません」

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