【大きいことは良いことだ】ジャガーMk VIIとMk Xを振り返る 英国のビックサルーン 前編

公開 : 2021.06.05 07:05

Mk IXへと展開したMk VIIのボディ

1950年代のジャガーといえば、XK 120が話題の中心。160km/h出せるサルーンというジャガーの夢を実現させたモデルだからだろう。その後、戦後の需要増加を見越してMk VIIが登場。強い支持を獲得し、ニューヨークでの発表時には500台の注文を集めた。

当初Mk VIIは古いフォールズヒル工場で製造されたが、後にブラウンズレーンの工場に移される。XKエンジンは、Mk VIIのボックスセクション・シャシー用に設計されたもの。サスペンションは先代のMk Vから引き続き、フロントがトーションバーだった。

ジャガーMk VII M(1954〜1956年/英国仕様)
ジャガーMk VII M(1954〜1956年/英国仕様)

ボディデザインは丸みを帯び、XK 120を彷彿とさせる。英国車らしい威厳を感じさせつつ、当時のアルファ・ロメオと共通するような優雅さも漂わせる。

ライオンズは投資から最大の結果を引き出すために、Mk VIIのボディへ長い寿命を与える必要性を理解していた。Mk VIIはわずかなリフレッシュを受けMk VIIIとなり、さらに1958年の3.8Lエンジンを載せたMk IXへ展開している。

それに続いて1961年に登場したのが、Mk X。後継モデルであり、革新的なモデルでもあった。まったく新種のジャガーといってもいい。Mk IXと比べて全長は140mm近く長く、全幅は76mm広く、全高は210mmも低い。

ジャガーの製造技術と高い遮音性を、当時の英国で最も大きく強固なボディに凝縮している。厚みも高さも180mm近くあるサイドシルは極めて堅牢で、ルーフ構造はボディ剛性にさほど意味を持たないほど。

強固なボディを活かし、Mk Xをフレームレス・ドアのハードトップセダンにすることも考えられたらしい。結果的に却下されたが。

英国車として最も広いリアシート

Mk Xは、丸目4頭のヘッドライトにフロントヒンジのボンネット、リクライニング・シートなど、新時代のジャガーたらしめる特徴が与えられていた。同時にダッシュボード中央のメーターや、リアタイヤ・スパッツなど、古いスタイルを消している。

車内には、新しいヒーターとベンチレーション機能を搭載。オプションでパワーウインドウが選べた、初のジャガーでもある。英国車として最も広いリアシートも備えていた。今でも、その記録は変わらないかもしれない。

ジャガーMk X 4.2(1964〜1966年/英国仕様)
ジャガーMk X 4.2(1964〜1966年/英国仕様)

Mk Xの最高速度は、トランスミッションや圧縮比で異なったが、185km/hから193km/hと充分。安定した挙動や優れた乗り心地、走り全体の上質さなど、ビッグサルーンとしての新基準をジャガーに与えた。

英国ブラウンズレーンはディスクブレーキの技術でも進んでおり、ダンロップ製のキャリパーを4輪に獲得。反面、14インチというコンパクトカー並みに小径なホイールは、ジャガー史上最小だった。

トランスミッションはATが前提。不具合がつきものだったが、パワーステアリングも得ていた。XK型エンジンには、ストレートポート・ヘッドにトリプルSUキャブを採用している。

サスペンションは、フロントがコイルスプリングのダブルウイッシュボーン式で、リアが独立懸架式。リア・ダンパーは4本を備えている。

ジャガーは当然、新しいフラグシップ・サルーンにEタイプのような高い評価を期待した。先代より速く広く、豪華だったのだから。しかし、ライオンズらしくないデザインと、大きすぎるサイズが長く足を引っ張った。

この続きは後編にて。

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