【ランドローバーの電動化戦略】次期イヴォーク、ディスカバリー・スポーツ ついにEV化 レンジエクステンダー搭載

公開 : 2021.05.18 18:05  更新 : 2021.07.08 12:58

2つのプラットフォームで棲み分け

AUTOCARは、EMAモデルは高級車市場に投入されると考えている。投資家に公開された詳細情報によると、MLAベースのレンジローバーを始めとする将来のモデルは、最も収益性の高い市場にしっかりと配置されるという。

具体的には、新型ディスカバリー・スポーツとイヴォークは、電動プラットフォームの開発・製造コストがかかることもあり、ベース価格が高く設定されることになるだろう。2024年後半の発売時には4万ポンド(約618万円)近くになり、電気のみでの走行距離は最低でも97kmになると予想される。

シリーズ式ハイブリッドとは異なり、EVの航続距離を伸ばすために小型エンジンを搭載する。
シリーズ式ハイブリッドとは異なり、EVの航続距離を伸ばすために小型エンジンを搭載する。

JLRは、2030年までに、EMAベースの車両が全販売台数の約50%(34万台相当)、MLAベースの車両が約40%を占めるようになると見込んでいる。一方、ジャガーのEVは12%と控えめな数字となっている。

EMAは実質的に、床置きの大型バッテリーやハイブリッドサイズの小型バッテリーを搭載できるEV用プラットフォームであるが、「リーンバーン技術で設計された」小型のレンジエクステンダー内燃エンジン(ICE)が組み合わされている。

JLRの投資家向け説明会によると、このレイアウトは、「複数の内燃機関を1つのシンプルな小型ICEに合理化し、コストを排除する」ことを意味しているという。JLRの社内ICE生産が大幅に合理化されることになるようだ。

全体的には、マツダMX-30に採用されたプラットフォームと非常によく似たソリューションだ。ただし、マツダのレンジエクステンダー仕様では、パワーユニットとして小型のロータリーエンジンが搭載される。

電気モーターで各アクスルを駆動することにより、従来の機械式トランスミッション、ディファレンシャル、ドライブシャフト、プロップシャフトが不要になる。レイアウトがシンプルになり、駆動系のトラブルが減るだけでなく、オフロード性能の向上につながる。

なぜなら、トルクとパワーを各車輪に個別にきめ細かく割り当てることができるため、機械式のシステムよりもはるかに迅速かつ制御しやすい方法で、スリップを減らし、グリップ力の高い車輪に駆動力を振り向けることができるからだ。オンロードでのハンドリングや乗り心地の改善(アンダーステアの解消など)も同様の理由で可能だ。

自動運転など最新技術にも対応

JLRの内部資料によると、EMAは「最も価値の高い部品であるバッテリーを中心に設計されている」という。シンプルに設計され、さまざまな化学的性質のバッテリーに対応しているとのことだ。また、フラットなフロアは「最大限の室内空間を確保できる」としており、これは7人乗りのディスカバリー・スポーツの存続にもつながる特徴だ。

全輪駆動システムには、800V対応の新しい電動ドライブユニットを採用し、「クラスで最もトルク密度が高い」とされている。また、JLRのエンジニアによれば、この新しいモーターは「92%の効率」を誇り、1kWhの電力消費で6.4~7.2kmの走行が可能であるという。

電動化に伴う性能上のメリットと、高度な自動運転やコネクティング技術を組み合わせる。
電動化に伴う性能上のメリットと、高度な自動運転やコネクティング技術を組み合わせる。

同様に重要なのは、EMAでデビューすると思われる新しい電気アーキテクチャーの導入である。これは、「社内で設計された、最先端の、ドメインベースのEVアーキテクチャー」と表現されている。JLRによれば、「イーサネット・バックボーン」により「ECUの統合と削減」を可能にしているという。

資料によると、新型イヴォークとディスカバリー・スポーツには、レベル2、レベル2プラス、レベル4の自動運転機能が搭載され、他の車両や交通管制ネットワークなどのインフラとの通信が可能になるという。また、いわゆる「オフボード・データ・マネジメント」により、「メンテナンス時期の予測」が可能になる。

多くの自動車メーカーと同様に、JLRはコネクティビティによって新たな収益機会を得られることを期待している。ソフトウェアやファームウェアの無線アップデート、新世代のアプリを提供するとともに、新しい支払いシステムを可能にし、「キュレートされたデジタル・メディアとカスタマイズされたブランド体験」の実現を目指す。

パワートレイン戦略の中で、水素技術は選択肢に残っている。公式には、「プロジェクト・ゼウス」としてJLRが進めている燃料電池研究プログラムの詳細を公開するには「早すぎる」としている。

しかし、内部情報によると、燃料電池は、「先進的な電気推進」パワートレインのための航続距離延長ハードウェアとして、「将来的に活用される」可能性が示唆されている。

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