【140年前の元祖電気自動車】ギュスターヴ・トルヴェの電動三輪車 レプリカでパリを走る
公開 : 2021.05.28 09:45
史上初の充電可能な純EVを開発した、ギュスターヴ・トルヴェ。誕生から140年後の2021年、英国で生まれたレプリカがパリの通りを走りました。
三輪自転車にバッテリーとモーターを合体
1881年にギュスターヴ・トルヴェが制作した、史上初の純EV。そのレプリカといえども、限界領域まで攻めた走りを試す勇気は出てこない。写真をご覧いただければわかるように、とても華奢なのだ。
3本のタイヤは、ソリッドゴムで極細。ステアリング操作で、その内の2本が向きを変える。ブレーキはレザーのベルト。小さなシートの座面は、肩の位置くらいの場所にある。小さなモーターは、スイッチのようなスロットルで制御する。
電気自動車へのシフトが進む2021年。安全性の評価という点でも、目をみはるほどの進化を遂げていることが良くわかる。今から140年前、トルヴェの時代では特に問題にはならなかったのだろう。
コベントリー製の三輪自転車に、彼が制作したバッテリーとモーターを合体。フランス人は、史上初と考えられる充電可能な電気自動車を生み出した。
この電動三輪車が誕生した1881年4月19日といえば、まだアメリカ西部は未開拓。南アフリカではトランスバール戦争が終わり、英国ではビクトリア女王が在位していた。
電動三輪車に乗り、パリ1区のヴァロワ通りに向かったトルヴェ。座っているだけで進む三輪車は、多くのパリっ子を興奮させ、怖がらせた。イラストには、犬が電動三輪車を追いかける様子が描かれている。
「パリジャンの多くは、悪魔が通り過ぎると感じたでしょうね」。と笑うのは、トルヴェの子孫の1人、パトリック・シャルゲロンだ。
電気駆動の技術は広く用いられていた
「1881年に電気自動車が誕生していたとは、想像していませんでした。1900年か、1910年くらいだと思っていましたよ」。シャルゲロンのような驚きは、多くの人が抱くだろう。内燃エンジンが発明される何年も前に、電気自動車が走っていたのだから。
ゲイドンの英国自動車博物館で学芸員を務める、キャサリン・グリフィンに話を聞いた。「トルヴェが電気モーターと充電式バッテリー、自転車を組み合わて作った乗り物は、最も初期にあたる自動車の1つでした」
「電気自動車の歴史を振り返れば、それが現代に生まれた技術ではないことがわかります。興味深いものですよね。1800年代後半、電気駆動の技術は広く用いられ、現代と同じメリットを備えていました」
「よりクリーンで、静かだったんです。同時に電気駆動を選ばない理由も、現代と同じでした。航続距離や信頼性などですね。道路環境が整備され都市同士が結ばれても、当時のバッテリーでは到達することが難しかったのです」
「その後ガソリンの価格が下落し、内燃エンジンを大量生産する方が安価になりました」。ご存知のとおり、20世紀は内燃エンジンの時代となった。
トルヴェの電動トライクのレプリカ製作だけでなく、初走行から140周年目にパリを走るということも、筆者の電気自動車プロジェクトの目標の1つになっていた。未来を担う純EVだが、その元祖を復元させる取り組みも、正しいと思えた。