【価格・環境・安全】EVコスト、移動の自由に影響 ステランティスCEO語る 大衆向けに価格を維持すべき
公開 : 2021.05.19 20:05 更新 : 2021.07.08 13:04
規制により移動の自由が減る?
タバレスは、EVへの切り替えを義務付けることについて、「各国政府は世論を味方につけようとしている」とし、「それはそれで構わないが、科学的根拠を理解し、ライフサイクル全体を分析する必要がある」と述べた。
「移動の自由、ライフスタイル、規制、低公害車には強い関連性があります」
「政府がいつ移動の自由に影響を与えるかによって、EVのタイムラインが左右されます。各国政府はエンジンの使用を禁止することで、それを可能にします。つまり、自転車で会社に行くか、EVを買うか、ということですね」
「新車販売における低公害車の割合は、2025年には30~35%、2030年には70%以上になるでしょう。規制次第では70%を大きく超える可能性もあります。規制で認められなければ、自転車かEVか、どちらかを選ぶことになります」
価格を下げられなければ雇用に影響も
タバレスは、ステランティスの欧州における製造拠点は、電動化後も変わらないと予想している。そうでなければ「社会的影響」が生じ、雇用が失われる可能性もある。
「もし、クルマを安価で安全かつクリーンなものにすることに成功すれば、市場規模は同等かそれ以上になるため、製造拠点は変わりません。手頃な価格で提供できなければ、市場規模に影響が出て、製造拠点を調整する必要が出てきます」
「テクノロジーを使いこなすことが前提ですが、きっとそうなると思います。市民に手頃な価格のモビリティを提供するために、2万8000人のエンジニアが日々働いています。技術面では、必要なものを習得することができますが、その後は価格の問題が出てきて、製造拠点にも影響が出てきます」
「エンジンを作るのをやめて、代わりにバッテリーセルを作るようになるでしょう。これは劇的な変化ですが、不可能ではありません」
「わたし達に残された問題が、価格の妥当性です。3万ユーロ(400万円)のEVを購入できない中間層のモビリティーの自由をいかに守るかということです」
ICE車とEVのコストを同等にすることは将来的には可能かもしれないが、企業の利益を守れるかどうかは定かではない、とタバレスは言う。
「もし、現在と比較してEV1台あたりのマージンを確保できなければ、リストラが行われ、社会的な影響も出てくるでしょう」
「ステランティスでは、生産性をベースにコストをコントロールし、高品質なパフォーマンスとコスト削減を実現して、現在のICE車と同等のマージンを守りたいと考えています」
「成功すれば、社会的に大きな影響はないでしょう。2025年までに成功する可能性は高いですが、それまでに実現しなければならない大変なことがたくさんあります」
「課題はゼロ・エミッションではなく、低価格化、マージンの確保、そして重大な社会的影響の回避にあります」