【トライデントの完全復活】マセラティMC20へ試乗 自社開発の3.0L V6 630ps 前編
公開 : 2021.05.22 08:25 更新 : 2022.08.31 18:38
カーボンを多用した機能的なデザイン
ボディパネルもカーボン製。スタイリングの微妙なニュアンスは、写真ではお伝えしきれない。低い位置のフロントグリルと、その中央で輝くトライデントのシンボルなど、従来のマセラティらしさも取り入れられている。
ブルーに塗られたボディ上部は、抑揚が強く彫刻的。一方で下部は、動的特性に大きな影響を与えるセクション。アクティブエアロを採用し、冷却性能と充分なダウンフォースを獲得している。
フロントスプリッターの両端は上方へカナードのように折り曲がり、フロントフェンダーから伸びるフィンが、ドアと一体化されている。サイドシルは大きく張り出し、リアフェンダー上部に吸気口が開き、後端にはワイドなディフューザーが付く。
シャシーの下面には、気流をコントロールするボルテックス・ジェネレーターと垂直フィンが備わる。極めて機能的なデザインだ。
ボディサイズは全長4669mm、全幅1965mm、全高1221mmと小柄な方。フェラーリF8トリブートと比べると、58mm長く、14mm狭く、15mm高い。ホイールベースは2700mm。前後のトレッドは、1681mmと1649mmとなる。
ドアは高い位置のヒンジを支点に上方へ開く。開口部は大きく、サイドシルの形状も手伝い乗り降りしやすい。
MC20のインテリアデザインは比較的シンプルで、イタリアンな華やかさは薄い。色使いは暗いが、機能的であることがわかる。ミニマリストで、装飾的な部分はほぼない。
メーターパネルとダッシュボード中央にあるのは、高精細のモニター。幅の狭いセンターコンソールには、スイッチ類が最小限に並ぶ。
自社開発の90度3.0L V6 ビトゥルボ
シートはサベルト社製のカーボンファイバー・バケット。電動で調整可能だ。モータースポーツ前提にサイドサポートは高く、シェルの剛性感も高い。
ドライビングポジションは完璧。座面は低く、前方視界も素晴らしい。フロントガラスの上にあるバックミラーはモニター式で、リアカメラ映像がリアルタイムで表示される。荷室空間も、大きくはないものの用意されている。
ステアリングホイール上のスタートボタンを押すと、柔らかい破裂音混じりにMC20が目を覚ます。ギアの選択は、センターコンソールのボタンで。DはATモード、MはMTモードが選ばれる。
マセラティのミドシップ・スーパーカーに対する本気度は、エンジンを見ればわかる。3.0LのV6ツインターボ・ユニットは完全な新設計。イタリア語で海王星を意味する、ネットゥーノと呼ばれるエンジンだ。
90度のバンク角が与えられ、モータースポーツへの参戦も視野に構造設計されている。かつてのパートナー、フェラーリの力はもはや借りていない。モデナに構える、マセラティの施設で自社開発された。
ドライサンプでカムシャフトは4本、バルブタイミングは可変式。IHI社製のターボチャージャーを2基と、ボッシュ社製のダイレクト・インジェクションを搭載している。ツインスパークで、F1譲りといえるプレチャンバーと呼ばれる燃焼技術も採用した。
純EV版のMC20も、2023年から生産が始まる。今回試乗するV6ツインターボのMC20には、電動化技術は載っていない。
この続きは後編にて。