【トライデントの完全復活】マセラティMC20へ試乗 自社開発の3.0L V6 630ps 後編
公開 : 2021.05.22 19:05 更新 : 2022.08.31 18:38
サスペンションもステアリングも抜群
ドライブモードごとに2段階の減衰力特性が選べ、滑らかとまではいえないものの、しなやかなオンロード品質を得ている。小さな隆起部分などのいなし方は、とても印象的。大きなコブの衝撃吸収性も高い。
サスペンションは、前後ともにダブルウイッシュボーン式。安定性と姿勢制御とを、不備なく両立させている。
電動機械式を採用するステアリングも抜群。ロックトゥロックは2.2回転で、適度に軽く扱いやすい。操舵感は常に一定で、純粋な手応えが伝わってくる。サスペンションの負荷も感じ取れ、コーナリング時のグリップレベルを判断しやすい。
ブレーキング時のダイブはほぼなく、旋回時の姿勢もフラット。重心は低く、慣性も低い。繊細なステアリングでマセラティを正確に導ける。リアの秀でたグリップ力は、コーナー出口の強烈な脱出加速を生み出す。
難しいところはまったくない。MC20との一体感は、相当に濃い。
一層MC20へ惹き込まれるのは、サーキット。ブリヂストンが専用に開発したという、フロント245/35 ZR20、リア305/30 ZR20というタイヤは、滑らかな舗装でさらにその真価を発揮する。
コルサ・モードを選択すると、明確にステアリングやアクセル、8速DCT、ダンパーの特性が変化。それでいて、運転しやすさという距離の近さは変わらない。
高速コーナーを本気でプッシュしていくと、アンダーステアの気配がある。しかしエイペックスを目指すラインへ、簡単に修正できる。シャシーはアクセルペダルの操作に敏感。リアタイヤの働き次第で、ノーズを内側に巻き込んでいける。
今後のトライデントに強い期待を抱かせる
MC20の反応は漸進的で信頼でき、驚くほど意思疎通がしやすい。自由にも振り回せる。630psもあるミドシップ・スーパーカーの印象として、こんな表現につながるとは想像していなかった。
ブレーキはカーボンセラミックで、ディスク径はフロントが330mm、リアが350mm。キャリパーはフロントに6ポッド、リアに4ポッドが組まれる。ペダルの踏み始めはやや硬さが目立つが、温度の上昇とともに制動力も増していく。
ペダル操作で制動力の強さは調整しやすく、日常的な運転も充分に賄えそうだ。
スーパーカー・カテゴリーへの復活を、MC20で果たしたマセラティ。サルーンやSUVが中心だった期間を経て、われわれを唸らせる、過去の栄光を見事に映し出すようなモデルが誕生した。
フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンなど、ミドシップ・スーパーカーの覇権争いに、マセラティは秀逸なMC20で挑む。ブランドとして、パフォーマンスの新基準に到達したことは間違いないだろう。スタイリングも特別感が強い。
グループPSAとFCAとの合弁企業、ステランティス傘下のプレミアムブランドとして、盤石な可能性を感じさせる。今後のトライデントに、強い期待を抱かせてくれる1台だ。
マセラティMC20(欧州仕様)のスペック
英国価格:18万7230ポンド(2808万円)
全長:4669mm
全幅:1965mm
全高:1221mm
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:8.7km/L
CO2排出量:262g/km
乾燥重量:1475kg
パワートレイン:V型6気筒3000ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:630ps/7500rpm
最大トルク:74.2kg-m/3000-5500rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック