【新型ヴェゼル試乗】車格を超えた安心感のワケは? ハイブリッド/ガソリンに共通する味つけ

公開 : 2021.05.24 06:45  更新 : 2021.12.27 23:44

ホンダ・ヴェゼル新型の試乗レポートです。e:HEV(ハイブリッド)と、ガソリンを乗り比べ。どちらにも共通する走りの味を見つけました。

新型の特徴は?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)

フィットやフリードのハードウェアから発展したコンパクトSUVが初代ヴェゼル。

ファストバック・クーペを思わせるサイドビューなどスペシャリティ志向SUVの雰囲気を漂わせるが、センタータンク・レイアウトによるスペース効率に優れたプラットフォームや座面チップアップとワンタッチ・ダイブダウンの2通りの収納が可能な後席機能により、優れた居住性と積載性を備えている。

新型ヴェゼルe:HEVプレイ(FF/サンドカーキ・パール&ブラック)
新型ヴェゼルe:HEVプレイ(FF/サンドカーキ・パール&ブラック)    宮澤佳久

新型はそういった初代の特徴を継承しているが、後半部の絞り込みを抑えたキャビンデザイン、タフさを感じさせるフロントマスクなど、SUVらしい実用性を強化しているのが特徴の1つだ。

また、フィット同様にハイブリッド車のシステムをパラレル式のi-DCDからシリーズ式をベースにしたe:HEVに変更した。

e:HEVはシリーズ式同様にエンジン発電/電動駆動を基本にするが、エンジンによる直接駆動機構を備え、低負荷の中高速域巡航ではパラレル式として振る舞うのが特徴。いわばシリーズ/パラレルのスイッチング式とも呼べるシステム。

電動のメリットを活かしながら、シリーズ式の弱点である高速巡航時の燃費改善を図ったシステムである。

また、車種構成も一新し、ガソリン車を1グレード設定とし、e:HEVを3グレード設定に。

PLaY(プレイ)以外はFFと4WDの選択が可能。なお、プレイがFFに限定されるのはハードウェア面の問題ではなく、販売政策によるものである。

e:HEV 増えた余力感の詳細 

e:HEVの駆動用モーターはフィットと同型だが、最高出力を20%増の96kW(131ps)とした高出力型を採用している。

車重はフィットの約13%増であり、タイヤ外径を含む総減速比では約13%低くなっているので、スペックから見れば最高出力増は中高速域の動力性能の向上を示している。

後席の座面チップアップは新型でも可能。(新型ヴェゼルe:HEVプレイ/内装色:グレージュ)
後席の座面チップアップは新型でも可能。(新型ヴェゼルe:HEVプレイ/内装色:グレージュ)    宮澤佳久

プレイ(e:HEV/2WD)の試乗印象もスペックに則しているが、どちらかと言えば数値以上に加速性能に振っているように感じられた。

負荷の安定した市街地走行ではエンジン稼働も抑えられ、稼働中のエンジン音も穏やか。浅いアクセル開度での緩やかな踏み増しにも即応し、純電動駆動らしい力強いドライバビリティを示す。

従来のi-DCD車と比較すると、実用域の余力が2、3割増えた感じである。

速度上昇や急加速など負荷が大きくなるとエンジンの稼働時間も回転数も高まる。速度変化との連携感は乏しいが、エンジン回転数はアクセル踏み込み量と連携して制御され、加速への期待値とエンジンの稼働感に違和感はない。

ハイブリッドなら当然の反応だが、それにしても他のハイブリッド車ではあまり使わない高回転域も積極的に使用する。

回転数を抑えた余力感の演出よりも実用性能の余裕を優先した制御であり、登坂や高速域での加速性能は従来車から大幅向上。長駆レジャーでの使い勝手もいい動力性能である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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