【詳細データテスト】ミニ・コンバーチブル らしさ健在の走り 角の取れた乗り心地 実用性もほどほど
公開 : 2021.05.29 20:25
走り ★★★★★★★★★☆
長年にわたり、多くのメーカーがこの手の小さなコンバーティブルにパワフルなエンジンを積むのを避けてきたのは、予想できるだろうが、シャシーやハンドリングの破綻を恐れてのことだ。そこでボディを補強すると、重量が増して、走りの大胆さが削がれる、という悪循環にハマってしまう。
では、クーパーSコンバーチブルはどうかというと、ひ弱な感じもなければ、取り立てて重さや構造的な妥協が見られるところもない。ラインナップの中では最強バージョンではないことを考慮すると、この屋根なしモデルの運転がいかに楽しめるかという点におけるミニのフィロソフィーについて語ることは多い。
簡単にいえば、大いに楽しめるということになる。3万ポンド(約420万円)級のホットハッチに比べれば、速さも完成度も、パンチも、ボディコントロールやハンドリングの粘り強さも敵わないが、それは想定内だ。ところが、そこそこ飛ばしたり横荷重がかかったりした場合には、すばらしく鋭く力強い走りをみせる。
0-97km/hが6.7秒というテスト結果は、0-100km/hが6.9秒という考証データと符合する。デュアルクラッチのスポーツDCTギアボックスを積み、トラクションコントロールをダイナミックモードに入れると電子制御ローンチコントロールが使える。クラッチのオーバーヒートを防ぐため、エンジン回転やホイールスピンはかなりタイトに制限されるが、何度繰り返してもほぼパーフェクトなスタンディングスタートを決めてくれる。
電子制御デバイスをカットすると、フルスロットルでは17インチのフロントタイヤをドライ路面でも空転させ続けるだけのトルクはある。それでも、トルク特性はDCT車でハードな操作をしたときにありがちな唐突さやぞんざいさを感じさせることはない。
滑りやすいコンディションでもコントロールしやすいだろうことは、十分に想像できる。変速ありの48−113km/h加速は5.8秒。フォード・フィエスタSTと比較してもコンマ1秒落ちに過ぎない、上々のタイムだ。
高めのギアではフィエスタSTほどの力強さがなく、もう少しトルクがほしくなる。また、ルーフを閉めたときに聞こえてくるエンジン音は、ややデジタル合成感が耳につく。少なくとも音に関しては、すぐに解決できる。ルーフを開ければ、ターボの甲高い音やエキゾーストからの鼓動音をたのしめるからだ。