【セナ・エンジンのスピードスター】マクラーレン・エルバへ試乗 ルーフレスの815ps
公開 : 2021.05.30 08:25
完全にクルマとドライバーが一体になる
しかもフロントガラスがないから、ドライバーの露出度は高い。これらが組み合わさり、唯一無二の感覚体験を味わえる。本当のエルバを解き放つには、サーキットが不可欠だけれど。
マクラーレンは、セナのようにサーキットへ最適化されたモデルではないと話す。それでも筆者は心から楽しめた。ダウンフォースがセナより低く、ストリート用タイヤが能力を制限しているという感覚を受けないためだろう。
思う存分サーキットを走り回れる。サウンドも、マクラーレンF1以降のモデルで一番良いと感じた。
素晴らしいシャシーバランスで、操縦の自由度が高い。極めて軽量で見事にセットアップが決まったモデルでしか得られない、完全にクルマとドライバーが一体になったような感覚に包まれる。
長いグッドウッド・サーキットのメインストレートですら、またたく間に走り抜ける。ラヴァン・コーナーを抜けたら、アクセルを踏んで、シフトアップを数回。そしてすぐにブレーキ、そんな感じだ。
価格帯がまったく異なるから、適正な褒め言葉とはいえないかもしれないが、ベストな状態のケーターハム・セブンの印象にも近い。享受できる体験は、想像できるであろう水準の最大値にある。
セブンやアトムなど、非実用的な走りに特化したスポーツカーを購入すれば、ずっと安く楽しめると考えるかもしれない。だがエルバの購入層は、デザインや独自性、希少性といった要素に、金額を度返しにする訴求力を感じるのだろう。
贅沢な楽しさを堪能できるスピードスター
確かに、実用的な側面だけでなく、142万5000ポンド(2億1375万円)という英国価格や生産台数の縮小などを知り、冷ややかに見る読者もいると思う。筆者もその気持は理解できる。
しかし、エルバの真価を歪めて捉えないで欲しい。マクラーレン・オートモーティブが過去10年間に生み出してきたモデルの中で、最もドライビング・ファンなクルマだと断言できる。
セナやP1、LTシリーズなどいくつもの傑作を生み出してきたマクラーレン。それらを塗り替えるほど、贅沢な楽しさを堪能できるスピードスターだ。
マクラーレン・エルバ(欧州仕様)のスペック
英国価格:142万5000ポンド(2億1375万円)
全長:4611mm
全幅:1944mm
全高:1088mm
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:2.8秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1269kg
パワートレイン:V型8気筒3994ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:815ps
最大トルク:81.4kg-m
ギアボックス:7速オートマティック