【都会派コンパクトとして完璧】フィアット500 エレクトリック ベースのアクションへ試乗
公開 : 2021.06.07 08:25
気持ち良い運転で笑顔を生んでくれる
ナビやラジオなどの機能は、自身が持つスマートフォンの役割。ダッシュボードには固定用のクレドールが付いている。
大きなタッチモニターがないかわりに、実際に押せるボタン類は残された。オーディオのボリュームはノブを回して変えられるし、エアコン用スイッチもダッシュボードの中央に並んでいる。モニターに頼らずとも、視覚的なスマートさを得られる好例だ。
インテリアデザインには、ディティールまでこだわりを感じる。ダッシュボードのラインや、ドアハンドル内の500をかたどったシルエットなど、観察するのが楽しい。
最新のフィアット500の個性は、20km/hくらいで走っただけで感じ取れる。まずパワー・オンでクラシカルな音楽を鳴らしてくれる。ドライバーに、運転する心構えを作るように。その日の天気によって、聞こえ方は少し違うかもしれないけれど。
基本的に、500 エレクトリックは笑顔を生んでくれるクルマだ。馬力は95psしかないから小さなロケットとまではいかないが、とても気持ちよく運転できる。
ボディロールは程よく抑制され、予想以上にハイスピードなコーナリングもこなせる。ステアリングホイールへ伝わる感触はほぼないものの、反応は正確。カーブの途中で不意な起伏を通過しても、キックバックなども感取されない。
英国郊外の流れの速い一般道を飛ばすことは、500 エレクトリックの得意分野とはいえない。それでも、実際に走らせれば期待以上の充足感が得られる。
都会派コンパクトとして完璧
そもそも航続距離が短い500 エレクトリックは、都会派コンパクト。その目的は完璧にこなせる。市街地の狭い路地を苦もなく走れるし、短距離の高速道路も守備範囲。最高速度は135km/hまでだが、110km/h程度での走行なら余裕だ。
筆者が印象的に感じたのが、ダンパーのしなやかさ。減衰力の効きが良く、英国の路面状況でも問題なくいなしてくれる。サスペンションは多くの舗装の乱れを吸収し、滑らかに走れる。
細かな起伏が連続する場面では、ホイールベースが短いがゆえに落ち着きを保てなくなる。でも、乗り心地は快適といって良いだろう。
試乗前は、189kmというカタログ値の航続距離を心配していた。しかし1時間半ほど積極的に運転しても、バッテリーの残量は59%も残っていた。寒い季節ならもっと短くなるはずだが、多くのドライバーにとって不足ないシティ・コンパクトになりそうだ。
純EVに求める内容で、500 エレクトリックの選択肢の順位は入れ替わる。42kWhバッテリーでの320kmより長い航続距離が必要なら、別のモデルが良い。反面、短距離の自動車通勤や市街地移動が目的なら、これ以上に優れた選択肢は限られる。
フィアット500 エレクトリックは小さく軽量で、使い勝手が良い。筆者は現在の純EVとして、最適なパッケージだと感じている。
フィアット500 エレクトリック・アクション(英国仕様)のスペック
英国価格:2万295ポンド(304万円)
全長:3632mm
全幅:1683mm
全高:1527mm
最高速度:135km/h
0-100km/h加速:9.5秒
航続距離:189km
CO2排出量:−
車両重量:1255kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:23.8kWhリチウムイオン(実容量:21.3kWh)
最高出力:95ps
最大トルク:22.3kg-m
ギアボックス:−