【論より証拠】米での死亡事故「全体平均の半分ほど」 なぜスバルは「安全」?

公開 : 2021.05.31 05:45  更新 : 2021.10.13 12:04

「アイサイト」などのスバルの幅広い安全思想

しかし、スバルの安全開発担当者に確認したところ、返ってきた答えは「それもあるけれど、それだけではない」というもの。

単純に「AWDだから」というだけでは説明しきないという。

スバルは「アイサイト」が死亡事故減少につながっていると考える
スバルは「アイサイト」が死亡事故減少につながっていると考える

まず全体平均と比べた場合、スバル車の死亡事故件数が少ない事故形態は主に「車両単独」、「正対衝突(正面衝突)」、「交差点出合頭」、「歩行者/自転車への加害」の4つである。

1つめの「車両単独事故」に関しては、車線逸脱が主な要因と考えられるのでAWDによる走行安定性の高さが効いていると考えられるという。

2つめの「正対衝突」は、死亡事故に至るのはかなり衝撃が大きい状況となる。

そこに効いてくるのは「アイサイトによる減速」や「前突時のキャビンの強固さや拘束性能など乗員保護性能の高さ」が効果をもたらしているとスバルはみている。

交差点出合頭事故は、「周囲がよく見え他車に気づきやすい視界の良さ」と「側突時のキャビンの強固さや乗員拘束性能など乗員保護性能の良さ」。

そして歩行者や自転車を巻き込む事故が少ないのは、「アイサイトによる減速、歩行者などに気付きやすい視界の良さ、歩行者保護性能の高さ」と考えているそうだ。

すなわち、「AWD」のみならず「アイサイト」、「視界の良さ」、「衝突時に乗員を守る強固なキャビンと乗員拘束性能」など幅広いスバルの安全思想によって、スバル車が関わる死亡事故を少なく抑えているといっていいだろう。

「アイサイト」のメリット 論より証拠

いま、「安全」は自動車メーカーすべてが重点的に取り組んでいることの1つであり、スバルだけが特別力を入れているというわけではない。

しかし、全体平均よりも大幅に低いというスバルの実績は、なによりの「論より証拠」といえるのではないだろうか。

自動車アセスメント(JNCAP)において最高得点を獲得したレヴォーグ
自動車アセスメント(JNCAP)において最高得点を獲得したレヴォーグ    スバル

いずれにせよ、米国において販売台数あたりの死亡事故数が平均水準の半分ほどというのは驚くべき数字だ。スバルの安全神話は健在と言わざるを得ない。

余談だが、ここ数年、米国では側面衝突による死亡事故割合が増加傾向にある。

スバルによると、その理由は道を走るクルマのうちセダンなど一般的な乗用車が減り、セダンよりも車両重量が重いSUVの割合が増えていることが要因だという。

側面衝突時の相手車両の平均重量(大型トラックを除く)は、2014年には1801kgだったものが、2019年には2004kgへと増加。今後、各自動車メーカーは側突対応をさらに強化していくことになるだろう。

さて、日本ではどうだろうか。

公益財団法人交通事故総合分析センターのデータをもとに、その年の直近5年の販売車両(軽自動車を除く)を対象とした販売台数100万台当たりの事故件数をスバルが独自に算出している統計がある。

それをみると、2016年から最新データとなる2019年までの直近4年間は毎年、国内カーメーカー全体の平均を下回っている。

それ以前の7年間をさかのぼっても、スバルが全体平均を上回ったのは2015年だけで、ほかは平均以下、もしくは平均と同水準だ。全体の傾向をみると、スバルの事故件数は少ないと判断できる。

また、衝突被害軽減ブレーキを軸とした先進安全装備である「アイサイト」のメリットも大きい。

スバルが交通事故総合分析センターのデータをもとに算出した日本国内の統計(死亡事故だけではなくすべての事故の発生率)によると、「アイサイトVer.2」搭載車の追突事故はなんと84%も減少。歩行者事故発生率も49%減っているから効果は高いといえる。

さらに、進化版となる「アイサイトVer.3」搭載車の追突事故発生率はわずか0.06%というから驚くしかない。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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