【詳細データテスト】シトロエンC4 狭いスイートスポット 穏やかに走るのがベスト 快適性は要改善
公開 : 2021.06.05 20:25
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
シトロエンの象徴的なクルマには、いわゆるレトロなデザインをベースにしたように思えるものが少なくない。それでも、長年の成功例にならいたい衝動を抑えたことこそ、デザインティームのリーダーが本当に称賛されるべき点だ。
このクルマは、パッチリした目で1970年代のカーデザインを真似たりはしていない。しかし、それがむしろ、似たり寄ったりのハッチバックが多い中では、異彩を放ちじつに興味をそそる。目新しいがまとまっていて、ヴィジュアル的な工夫に満ちているが、うるさかったりやりすぎ感があったりはしない。
引き上げられた地上高、高いボンネットとベルトライン、ホイールアーチとボディ下部に張り巡らされたゴツいプラスティックのクラッディングなどは、このC4にコンパクトSUVの趣を与えている。Y字型のヘッドライトやクラムシェルタイプのボンネットの表面にある切り欠きなど、大ぶりで力強い造型もこのクルマにマッチしている。
はじめは奇妙な風貌に思えるかもしれないが、この薄いグリルと、一般的にはクルマの目に見える箇所にヘッドライトではなく線上のLEDデイタイムライトを配する顔つきを、ここ最近のシトロエンは意図的に作り上げようとしている。
実際のヘッドライトは、デイタイムライトより低い位置にある。見慣れないレイアウトかもしれないが、それも最初のうちだけで、次第に気にならなくなる。
リアは、長くて空力に効きそうなルーフと角張ったスポイラーが、ロベール・オプロンの描いたGSを彷彿させる。ただし、無理やり取ってつけたような印象はない。
比較的シンプルなシャシーを持つ新型C4だが、サスペンションには新機軸が盛り込まれている。ベースとなるのは、ステランティスグループのCMPこと、コモンモジュールプラットフォーム。一般的にはひとクラス下のBセグメントで広く採用されているが、C4カクタスと同じくこれを使うことで、多少のコストカットを実現するとともに、グループ全体でのスケールメリットを得ている。
また、このプラットフォームにより、新型C4にはEV仕様の設定も可能になった。もしもC4ピカソやC5エアクロスに用いるエフィシエントモジュールプラットフォーム(EMP)だったなら、プラグインハイブリッドにしかできなかったところだ。
メカニカルレイアウトやサスペンション形式には、それほど目立ったところはない。内燃エンジンは3気筒と4気筒で、フロントに横置きして前輪を駆動する。サスペンションはフロントがストラット、リアがトーションビームで、ここまではCMP系モデルの常道といえる。
ところが、詳細に観察していくと、シャシーのスペックには一般的なハッチバックとかけ離れたところが発見できる。スプリングは長めで、ハッチバックとしてはかなり大きい150mmを超える地上高を確保。ホイールは全車18インチを標準装着し、それに履くタイヤは、195/60という、このホイール径には珍しいサイズだ。経済性と乗り心地を重視した選択である。
注目は、シトロエン独自のプログレッシブハイドロリッククッション(PHC)だ。これは油圧式ダンパーに内蔵されたセカンダリーダンパーが、フロントは伸び/縮み両方、リアは縮み側の、それぞれ限界近くで減衰力を発揮する。
エンジンは、ガソリンユニットが100〜155psの1.2L直3ターボ、ディーゼルが111psと131psの1.5L直4を設定。テスト車は、ガソリン車の中位機種となる131ps仕様。ピュアテックというペットネームを持つそれには、8速ATが組み合わされる。