【クラスに生じる激しい競争】BMW iX 試作車の助手席に同乗 航続600km 総合523ps 前編
公開 : 2021.06.05 08:25
2021年後半の発売を前に、BMW最新の純EVへ同乗した英国編集部。未来的なデザインや質感の良い走りなど、競争力の高さを感じ取ったようです。
リチウムイオン・バッテリーは105.2kWh
BMW初の量産純EV、i3が姿を表したのは2013年。これまでに20万台以上を販売し、小さな後輪駆動のハッチバックは純EVのベストセラー、トップ10にランクインしている。BMWによる電気自動車の投入は、競合ブランドの間では比較的早かった。
それに続く純EVとして、2020年に発表されたのがSUVのiX3。X3をベースとしながらも、i3に続く新モデルの構築には7年を要している。
しかしBMWは一気にペースを早め、4ドアサルーンのi4と、iX3より大きいSUVのiXの開発を終えようとしている。今回、英国編集部ではiXのプロトタイプへの同乗が許された。i4のレポートもすぐにお届けできる予定だ。
2018年のパリ・モーターショーで発表されたSUVが、コンセプトカーのビジョンiネクスト。その量産版となるiXは、自社の純EVで最も先進的な内容を備えていると、BMWは自信を見せる。
iX3より大幅に手が加えられたCLARプラットフォームをベースとし、部分的にカーボンファイバー製の構造が与えられている。駆動系のシステムはBMWが第5世代と呼ぶもので、i4と基本的には同じ。
105.2kWhという大容量のリチウムイオン・バッテリーを搭載するが、i3のものと比べるとエネルギー密度は30%も高められているという。航続距離はWLTP値で600kmを誇る。定員は5名だ。
生産工場はドイツ・ミュンヘンの東、ディンゴルフィング。5シリーズから8シリーズまでのモデルと並んで組み立てられる。
歴代のBMWで最大のキドニーグリル
今回助手席に座れたiXは量産化前のテスト車両で、BMWの技術者が耐久性を確認するために試走させている1台。2020年末にiXは発表されており、偽装は一切施されていなかった。ショールームに並べそうな仕上がりに見える。
デザインは、かなり特有の個性がある。これまでのBMW製のモデルとは、まったく異なるプロポーションやディテールを備えている。
フロント中央に大きく構えるキドニーグリルは、歴代のBMWで最大。縦に長いフロントバンパーの下辺まで届く。グリルの上辺には細目のLEDヘッドライトが寄り添う。
大きなキドニーグリルだが、穴は空いていない。空力特性を向上させるためで、Cd値は0.25へ抑えられている。
ボンネットは短め。ボディサイズとしてはX5に匹敵するが、比べるとかなり短く見える。フロントガラスは大きく寝かされ、ルーフは後端に向けてなだらかにスロープし、リアガラスもだいぶ倒れている。
リアエンドの造形処理は、少しアウディにも似ているようだ。テールライトは細長く、テールゲートまで続いている。
このiXはBMWとして初めて、通常はボンネットを開くことができない。カバーはクラムシェル構造だがヒンジはない。フロントには荷物を載せられる空間もなく、メンテナンス時のみ特別な工具を用いて開くことになる。
面白いのが、ウオッシャー液の補充方法。BMWのエンブレムを押すと開いて補充口が現れ、洗浄液をタンクに注ぐことができる。