【クラスに生じる激しい競争】BMW iX 試作車の助手席に同乗 航続600km 総合523ps 後編
公開 : 2021.06.05 19:05
動的な質感は新しいBMWとして高水準
ステアリングは可変レシオだが、オプションでインテグラル・アクティブ・ステアリングという機能も選べる。これにより後輪操舵も可能となる。最大3.5度までリアタイヤは角度を変え、市街地での扱いやすさと、郊外の道での機敏性を向上できるという。
駆動力の分配比率は、ウェット時を除いて基本的にリアタイヤが優先。限界領域まで攻め立てることはなかったが、キスラーによれば、動的な質感は新しいBMWとして高水準だと評価している。
「このクルマを運転すれば、これほどの車重を信じられなく感じるでしょう。とてもレスポンシブで正確です。操縦性の磨き込みには相当な時間を費やしました。BMWらしいキャラクターを与えるために」
「内燃エンジンのモデルと比べると、コーナリングフォースや横方向の加速度などは大きく異なります。ですが、この仕上がりには非常に満足しています」。キスラーが説明する。
iXはCLARプラットフォームがベースというだけあって、X3やX5、X7などとの関係性は濃い。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式を採用する。
同乗したプロトタイプはエアサスペンションを備えていたが、iX 40 xドライブにはアダプティブ・ダンパー付きのスチールコイルが組まれる。
ダンパーは硬めながら、コンフォート・モードでもロールはしっかり抑え込まれていた。乗り心地の落ち着きは充分で、細かな起伏が続いても適切に処理。鋭い隆起部分などを通過しても、垂直方向の動きは良く吸収できていた印象だった。
iXが純EVのSUV界にもたらす激しい競争
実際の航続距離は、今回は確かめることができなかった。少なくともエコ・モードを選んだ時は、630kmという距離がモニターに示されていた。もしこの数字通りに走れるなら、iXはこのカテゴリーの純EVとして最長の航続距離を得られることになる。
最後に触れておきたいのが、バッテリーのプレ・コンディショニングを自動で行ってくれること。充電前にリチウムイオン・バッテリーの温度を最適化させ、いたわってくれる。急速充電器は、最大200kWの容量にまで対応するそうだ。
BMW iXのスタイリングは、正直いって型破り。実際に目の辺りにすると、当惑するほど。多くの点で、従来のBMWとは異なるモデルであることは間違いない。
コンセプトカーのようなインテリアデザインも特長だし、少なくとも助手席の印象としては、動的性能や走りの質感などクルマ全体の洗練度は高かった。その魅力は、小さくなさそうだ。
納得できるドライビング体験を実際に獲得していれば、BMW iXが純EVのSUV界に激しい競争をもたらすことは間違いない。AUTOCARを定期的に読まれている方なら、ライバルとしてアウディeトロンやテスラ・モデルXなどをすぐに思い浮かべるだろう。
直接ステアリングホイールを握れるのは、2021年の末になる。