【世界の潮流に逆行も】「マツダ6」次期型は後輪駆動? マツダの「理想」追求

公開 : 2021.06.05 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

ミニバンなきマツダ 理想を追求できる

市販車の多くが前輪駆動を採用することから分かるとおり、後輪駆動には欠点もある。

それはボディバリエーションの発展性が乏しいことだ。

マツダMPV(写真)や、プレマシー、ビアンテといったミニバンはラインナップから消滅した
マツダMPV(写真)や、プレマシー、ビアンテといったミニバンはラインナップから消滅した    マツダ

例えば、3列目の部分まで床を平らにしたミニバンを開発する場合、前輪駆動が圧倒的に有利で後輪駆動は不利になる。

後輪駆動では、トランスミッションや後輪に駆動力を伝えるプロペラシャフトの通るトンネルがあり、これをカバーできる位置まで床を持ち上げる必要が生じるからだ。

具体的には、初代と2代目の日産エルグランドトヨタ・グランビア、商用車の現行トヨタハイエースや日産キャラバンは、いずれも後輪駆動のシャシーに平らな床面構造を組み合わせた。

そのために床が高く、以前の後輪駆動のミニバンは、前輪駆動の現行型に比べて乗降性が悪かった。

床と併せて天井も高く、高重心になるから走行安定性も良くない。カーブでは左右に振られやすく、乗り心地にも悪影響を与える。

天井が高くなれば空気抵抗も増えて、車両重量も増加するから、動力性能や燃費性能も悪化する。

また全長が4m以下のコンパクトカーでも後輪駆動は不利だ。

ボディが短いから後席の足元空間が狭めで、後輪駆動だとプロペラシャフトのトンネルまで張り出すから一層狭くなる。

後部にデファレンシャルギアが備わるから、荷室の底も深くできない。

ただし今のマツダは、床を平らにするトヨタ・アルファードのようなミニバンは造らない。

後輪駆動を採用するのは直列6気筒エンジンを搭載するマツダ6で、ボディも相応に大きいから、床面の中央にプロペラシャフトのトンネルが張り出しても窮屈にはならない。

つまり、BMW3シリーズや5シリーズのセダン/ツーリングを開発するのと同じ要領だから、後輪駆動を採用して直列6気筒エンジンを搭載しても、実用的な不都合は生じない。

前述のマツダの理想を追求できる。

直列6気筒+後輪駆動 新たなマツダが誕生

マツダ6を前輪駆動から後輪駆動に変更しても、海外を含めて売れ行きが急増することはない。

今は国内、海外ともにSUVの人気が高く、セダンとワゴンは一部の欧州市場を除くと売れ行きが下がったからだ。

マツダ6ワゴン
マツダ6ワゴン    マツダ

SUVはワゴンに比べると背が高く、空間効率も優れている。荷室にコンパクトな3列目シートを装着した車種もある。

実用性、走行性能、外観のカッコ良さを適度なバランスで調和させ、世界中で人気のカテゴリーになった。

そうなるとセダンとワゴンはマイナーな存在になるが、逆にいえば付加価値が重視される。

セダンとワゴンは、SUV(日本ではミニバンや背の高いコンパクトカー、軽自動車も含まれる)に比べると、低重心で走行安定性と乗り心地を高めやすい。

そこに直列6気筒+後輪駆動の採用で走りの機能をさらに研ぎ澄ませると、実用車ではなく趣味性の高いクルマとして成功する余地が生じる。

つまりフォーマルな雰囲気ならセダン、アクティブな感覚を求めるならワゴン、カッコ良さと2人乗りの贅沢を重視するならクーペという具合だ。

共通のプラットフォームとエンジンを使って、走りやデザインの上質な趣味性の強い上級車種を3タイプ用意する。

環境技術との調和を図ることができれば、新しいマツダ車の世界が開けるかも知れない。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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