【各社の思惑】なぜBMW「M」にワゴンがなく、アウディ「RS」はセダンが(ほぼ)ない?
公開 : 2021.06.07 12:00 更新 : 2021.10.13 12:04
BMWは「M3」にワゴンモデルを加えるとみられます。なぜ今、「M」のツーリングにGOサインが出せたのか考察します。
もくじ
ー気になるメッセージ M3にワゴン?
ーツーリングの「M」を送り出せるようになったワケ
ー時代の変化 クーペやセダン以外でも楽しむ「走り」
ーアウディRSの価値観「セダンよりハッチバック」
ー「M3」ワゴン 発売はいつになる?
気になるメッセージ M3にワゴン?
2020年8月、BMWはメッセージとともに1枚の写真を公開した。
その写真はリアスタイルで、明らかにワゴンとわかるのに加え、張り出したリアフェンダーと4本出しのエグゾーストパイプで力強さが強調されている。見るからにスポーツタイプのクルマだ。
そして以下のメッセージが添えられている。
「高性能スポーツカーのラゲッジコンパートメントを大きくして、可変性を持たせてはどうか?」
「BMW M社の歴史の中で初めて、『M3ツーリング』を設定することになった」
「この車両(の試作モデル)は間もなく定期的に目撃されるようになるだろう。すべてのBMW Mモデルと同様に、BMW M3ツーリングの集中的なテストとチューニングのプロセスは、ミュンヘン近郊のガルヒングにある開発センター周辺を走行するほかニュルブルクリンクの北コースでおこなわれる」
「プロトタイプによる公道テスト走行にゴーサインが出されたことは、市販に向けた1歩を踏み出したことを意味する」
「ツーリング」とは、BMWが本国などでステーションワゴンボディを示す名称。
すなわちこのメッセージは新型M3に史上初のワゴンボディが加わることを予告しているのだ。
そのメッセージに記されているように、「M3」にワゴンボディが用意されるのははじめてのこと(過去には「E46」型をベースとした試作車が作られて本国で公開されたが市販はされなかった)。
果たして、新しいM3にワゴンボディが加わる背景にどんな理由があるだろうか。非常に興味深い。
ツーリングの「M」を送り出せるようになったワケ
BMWジャパンの広報室によると2つの理由があるという。
1つは、クルマ作りの技術的なアプローチだ。
「各種の電子デバイスの進化により、ツーリングモデルでも、しっかりとサーキットを走れるクルマの開発が可能になったからです」(BMWジャパン)
その前提となるのが、「Mハイパフォーマンスモデル」の位置付けだ。
「M3」や「M5」をはじめとするMハイパフォーマンスモデルはあくまでもサーキット走行を前提に開発されている。
クルマ作りは隅々までそのポリシーが貫かれ、少し前までは「冷却性能を最優先に考えてバンパー開口部を塞ぐフォグランプやレーダーを装着しない」としていたほどだ。
Mハイパフォーマンスモデルは当初はクーペにしか存在しなかったが、その後セダン、オープンモデル、そして背の高いSUVへとラインナップを展開。
その背景にあるのが、技術の進化だという。
中でも電子デバイスの進化により、走行性能において物理的に不利である重心の高い車両などでも十分にサーキット走行を楽しめるクルマづくりが可能になったことがバリエーションの拡大に影響しているというのである。
そしてもう1つが、ニーズの多様化である。