【各社の思惑】なぜBMW「M」にワゴンがなく、アウディ「RS」はセダンが(ほぼ)ない?

公開 : 2021.06.07 12:00  更新 : 2021.10.13 12:04

時代の変化 クーペやセダン以外でも楽しむ「走り」

「荷物を多く詰めるツーリングモデルでのMハイパフォーマンスモデルの誕生を、多くのお客さまから要望いただいております」とBMWジャパンは説明する。

「3シリーズ」においては初となるワゴンボディのMハイパフォーマンスモデルだが、実は「5シリーズ」においてはかつて「M5ツーリング」が設定されたことがある。

BMW 5シリーズ(E60)には、ステーションワゴンタイプの「M5」が存在した。
BMW 5シリーズ(E60)には、ステーションワゴンタイプの「M5」が存在した。    シャッターストック

それは1992年から95年にかけて5シリーズとして3代目のE34型と、2007年から2010年にかけての5代目のE60型。

後者にはなんとV10エンジンを積んでいたのだから驚くべきステーションワゴンだ。

ただし、いずれも日本にも正規導入されなかった。

また、M5ツーリングの生産台数はいずれも1000台程度で、E34はセダンの1/10未満、E60ではセダンの1/15程度にとどまる。

「希少な存在」という表現もできるが、たくさん売れたという状況ではなかったのもまた事実といっていいだろう。

当時はまだBMWのハイパフォーマンスワゴンがニッチな存在だったのだ。

しかしながら、時代は大きく変化。ドイツ勢を見まわすと、メルセデス・ベンツの超高性能仕様である「AMG」やアウディの「RS」シリーズにはステーションワゴンが設定されて人気を博している。

それに今、それらのブランドやBMWではSUVの超高性能モデルも勢ぞろいしている。

「速くて走りを楽しめるクルマはクーペやセダンに限らない」という風潮が高まり、「M3ツーリング」も多くの人に受け入れられる可能性が増してきたというわけだ。

ところで、同じドイツのプレミアムブランドでも、最高峰のスポーツモデルをセダンに設定するのを拒んでいるブランドがある。アウディだ。

アウディRSの価値観「セダンよりハッチバック」

アウディの頂点に立つ「RS」シリーズは、もっともコンパクトな「RS3」を除きセダンに設定されておらず、BMWとの違いが興味深い。

高性能車に詳しい人の多くが頭に浮かべ、RSのイメージの中心となっているのは、「RS4アバント」と「RS6アバント」でどちらもステーションワゴンだ。

アウディの「RS」モデルには、RS4アバント(写真)などワゴン/ハッチバックタイプが多く設定される。
アウディの「RS」モデルには、RS4アバント(写真)などワゴン/ハッチバックタイプが多く設定される。

なぜセダンがないのだろうか。

「『RS4』と『RS6』にはかつてはセダンも用意された。しかし今では『RS5スポーツバック』や『RS7スポーツバック』があるから、セダンがなくてもそれらで十分カスタマーニーズに応えられる」

アウディ・ジャパンを通して質問したところ、本国からはそんな回答が寄せられた。

「セダンよりもハッチバックのほうがクールだから、『スポーツバック』があればセダンは必要ないだろ?」ということである。

アウディジャパンの広報担当者は「欧州では高性能セダンよりもスポーツバックのほうが強いニーズがあるようです」とフォローする。

またアウディのRSシリーズにおいて「RS3」にだけ例外的にセダンが存在するのは「RS3に関しては商品ラインナップとしてセダンを補完できるモデルが存在しないから」だという。

さて、メルセデス・ベンツはどうだろう?

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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