【詳細データテスト】アウディe-トロン 速いが刺激はない 新技術は持ち腐れ 快適性と静粛性は上々
公開 : 2021.06.13 11:05 更新 : 2021.06.28 09:23
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
アウディ電動化の先駆者であるe−トロンの量産開始から、もう2年が過ぎた。その間にラインナップは拡大し、小さいながらもモデルレンジを構成するまでになった。ほかのクルマを買うときのように、価格や出力の異なるモデルから選択できるのだ。
また、一般的なクロスオーバーSUVか、スピード感あるルックスのスポーツバックという、ボディタイプの選択肢もある。ただし、メカニズム的にみればいずれも、バッテリー容量は86kWhほどで、モーターを少なくとも2基備える四輪駆動だ。
今回のe-トロン Sクワトロに至っては、モーターを3基搭載している。アルミ/スティール混成シャシーはそのままに、通常のe-トロンではリアに積まれる高出力の非同期モーターを、フロントに1基設置した。リアは逆に、e-トロンのフロントに用いていた小型モーターを2基投入している。各モーターごとにプラネタリーギアを備え、後輪の左右それぞれに最大22.4kg-mのトルクを送り込む。
3モーターでのシステム出力は最高503ps、トルクは最大99.3kg-mに達するが、これは8秒間しかもたないオーバーブースト使用時の数字だ。全長4.9m級の高級クロスオーバーSUV、その重量は公称2620kg、テスト車の実測2634kgで、1tあたり200ps/38kg-mを切ることになる。
しかし、リアモーターは左右独立稼働が可能で、パワフルな電動車ではすでに馴染みのある加速性能に磨きをかけるものだ。電子制御系はリアアクスルを、デフを備えているかのように使えるようプログラムされていて、左右のトルク差が22.4kg-mを超えることはない。全開時にはモーター1基のみで走行することは決してなく、左右それぞれが駆動力を発揮する。
これだけでは飽き足らず、アウディはフロントにもブレーキを用いたトルクベクタリングを装備。後輪左右間で行われるのと同様の制御を、前輪でも行うよう仕立てている。
電気モーターのトルク特性にシングルスピードのトランスミッションが組み合わされているため、最大トルクはほぼ発進と同時に発揮される。パワーが頂点に達するのは、65km/hほどに達した時点だが、145km/hを過ぎる前にピークから落ちはじめる。
アクティブのロール制御や四輪操舵を、アウディはこのクルマに与えなかった。アダプティブダンパーや3チェンバー式エアサスペンションシステムは、スタンダードなe-トロンと同じものだ。ただし、パフォーマンス志向の再チューンが施され、ホイールサイズ拡大に伴いトレッドも拡げられている。