【AUTOCARアワード2021】ベントレー危機管理部門 イノベーション賞 柔軟な新型コロナ対応で

公開 : 2021.06.11 06:25

鍵を握った「情報」の確保

ベントレーの決断の鍵となったのは、情報だった。英国の企業の中でもいち早く、現場の従業員やその家族を対象とした検査プログラムを実施。1万8000件以上に及ぶ検査結果は貴重な情報源となった。

検査結果の記録、症状の自己申告、スタッフによる懸念事項の匿名表示など、さまざまな機能を備えた一連のアプリを社内で開発した(作業の多くは実習生が行った)。これらのアプリを開発したことで、「ベントレーは自分たちの能力に対する大きな信頼を得た」とフォンテーヌは言い、もはやこのような開発作業を外注することはないとしている。

ベントレーが自社開発したアプリ
ベントレーが自社開発したアプリ

「グループ内でアプリのダッシュボードを完備しているのは当社だけです。リアルタイムの事実とデータをもとに、会社を直接ナビゲートすることができます」

「今でも、現場にいる同僚の数やリスクなど、現場のすべてを把握しています。同僚の稼働状況、隔離されている人、コロナの症例数、そして今では同僚の何%がワクチンを接種したかを追跡しています」

このような情報により、ベントレーはより良い計画を立てることができるようになった。例えば、データから第2波発生の可能性を予測し、それに応じて準備を整えられる。人手不足になりそうな生産エリアを特定し、対応する時間を確保することもできる。また、これまで生産を担当していたスタッフは再教育を、実習生はさまざまな分野でクロストレーニングを受けるなどして、柔軟な対応が可能になった。

その結果、ベントレーは自信を持てるようになったとブランチャードは言う。

「ビジネスとして、自分自身をもっと信頼できるようになりました。それは、物事への対応において、コロナ以外にも応用できます」

アプリケーションの開発やクロストレーニング以外にも、パンデミックの中でベントレーが見せた革新的な取り組みは、今後も継続されるだろうとフォンテーヌは述べている。

「社内でスタンドアップ・ミーティングを行うようになりました。また、コロナ以前から同僚の意見に耳を傾け、協力し合う文化がありましたが、それがさらに強調されるようになりました。よりオープンで、異なる意見に耳を傾けることを望んでいます」

地域社会への支援にも注力

昨年6月、最初のロックダウン後に工場が再開したとき、フォンテーヌは正門で生産スタッフの復帰を歓迎した。その時点では、ベントレーが販売と生産の記録を打ち立てることになるとは、「想像もしていなかった」という。

「とにかく信じられない、というのが本音です」

復帰する社員を迎え入れるアストリッド・フォンテーヌ(右)
復帰する社員を迎え入れるアストリッド・フォンテーヌ(右)

パンデミックが始まって以来、ベントレーは事業計画「ビヨンド100」を発表し、2030年までにEVのみのブランドとなることを目標に掲げた。また、大規模なリストラが行われ、800人のスタッフが自主退職となった。

彼女は、パンデミックの中でベントレーが自社と社員をマネジメントした手法を誇りに思っていると言う。

「後から考えると、どうやってうまくいったのか不思議に思うことがあります。信じられないような状況でしたが、わたしは同僚たちをとても誇りに思っています」

地域社会への配慮

ベントレーの新型コロナ対応では、自社のビジネスだけではなく、拠点を置くクルーやチェシャーといった地域のコミュニティ支援も行われた。最初のロックダウンの際、同社のIT部門は古いノートパソコンを再生し、Wi-Fiホットスポットとともに子供の家庭学習に必要な社員に提供した。また、地元の病院や介護施設に個人用防護具(PPE)を製作して寄付したり、隔離中の人に食べ物を届けたりした。

「わたし達だけではなく、地域社会全体のための活動です」と、アストリッド・フォンテーヌは言う。

また、ベントレーはチェシャー・コミュニティ財団と提携し、新型コロナ基金「Covid Recovery Fund」を立ち上げた。地域の非営利団体を対象に、食の貧困、メンタルヘルス、教育、債務救済に取り組むプロジェクトに最大2万5000ポンド(約386万円)の助成金を提供するものだ。

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