【未来を勝ち取れ】ルイス・ハミルトン 頂点に立ち続けるモチベーションとは AUTOCARアワード2021

公開 : 2021.06.14 18:05  更新 : 2021.06.14 19:24

勝利の鍵は「準備」にあり

では、ここからはレーサーのルイスへ尋ねよう。自分のF1での記録や統計をすべて把握しているかどうかを訊くと、彼は次のように答えた。

「正直なところ、わからないですね。唯一知っているのは、チャンピオンの数だけです」

ルイス・ハミルトン
ルイス・ハミルトン

インタビュー時点での彼の記録は、100回のポールポジション、98回の優勝、169回の表彰台、55回の最速ラップ、3879点のキャリアポイントに加えて、優勝が7回である。

統計的には、ハミルトンはF1史上最も偉大なドライバーである。しかし、史上最高のドライバーとは?今日はそのことを議論するつもりはない。記者が知りたいのは、ハミルトンがなぜ、毎回論争もなく、ほとんどミスもなく、クリーンに勝つことができるのか、ということだ。

「いや、そんなことはありませんよ!グラベルに突っ込むのを見たでしょう」

イモラでは、優勝を争うレッドブル・ホンダのライバル、マックス・フェルスタッペンを追い詰めるためにコースアウトしてしまったのだ。その後に起きたアクシデントによるセーフティーカー導入がなければ、ハミルトンが2位に返り咲くことは不可能だっただろう。

「わたし達全員にとっての夢は、未来の予知能力を手に入れることだと思います。しかし、誰もそんな能力は持ち合わせていません。では、次善の策は何か。できる限りの準備をすることです。週末に向けてどれだけ準備をするか、自分の長所と短所を理解することです」

「もちろん、その中には経験を必要とするものもありますが、適切なタイミングで適切な場所にいることは、10歳のときにオートスポーツ・アワードに参加したときから意識していました。たまたまロン(当時のマクラーレンCEO、デニス)が来ていて、彼の目に留まったんです。それがきっかけで、わたしの人生にはいろいろなことが起こりました」

デニスはその夜、若き日のハミルトンと握手を交わし、彼の成長を見守り、すぐにジュニアドライバーとして契約した。

「今でも、どう予選を通過するか、どうレースに参加するか、どうコースに出るかによって、良い結果が得られることもあれば、破滅的な結果になることもあります。経験を積みながら、それらのバランスの取り方を学んでいるところです」

F1に参加できただけでも大きな誇り

自身の統計を知らないというのは、最も成功したスポーツ選手に共通するテーマであり、彼らにとっては次の勝利が常に重要なのだ。しかし、最も過酷なスポーツの世界で15シーズンを過ごし、多くのレースで勝利してきたハミルトンにとって、グリッドにとどまることはどれほど難しいことなのだろうか。

「過程が大事なんです。今年は何に直面するかわかりません。もちろん、毎年信じられないほど難しくなることは予想できます。まだ21のレースが残っています。長いですね……。すでに1年の大半を過ごしたような気がします。でも、これからもっと激しく、もっともっと厳しいものになっていくでしょう」

ルイス・ハミルトン
ルイス・ハミルトン

「わたしにとっては、F1に出られたことだけでも大きなマイルストーンであり、常に誇りに思っていることの1つです。なぜなら、それは家族のおかげだからです。両親の献身は、わたしにとって想像を絶するものでした」

「今日の世界では、人々は新しいクルマ、新しい家、新しい服を買い、ショッピングで良いものを手に入れようとしていますが、わたしの両親は長い目で見て、わたしに自分たちよりも良い生活をさせるために、そのようなことをすべて諦めました」

ハミルトンの内面には、父親のソファで寝ながら育ち、黒人チャンピオンはおろか黒人選手が誕生したこともないスポーツを制覇するという夢を追い続けてきた、謙虚な生い立ちの人間性が残っていることは明らかだ。

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