【スーパーSUVと暮らしてみた】ランボルギーニ・ウルスと10週間 楽しさと実用性 後編
公開 : 2021.06.27 09:45
英国価格20万ポンド(3080万円)以上のスーパーSUVは、普段使いできるクルマなのでしょうか。英国編集部がウルスと2か月半暮らしてみました。
スポーツ・モードでの息を呑む圧倒的な速さ
ランボルギーニ・ウルスでスポーツ・モードを選ぶと、高速域での姿勢制御が向上し、ハンドリングがわずかに鋭くなる。V8ツインターボが放つエグゾーストノートは、少し勢いを増す。
ロード・モードでは、ゆったりと落ち着いた雰囲気のSUVになる。スーパーが付くSUVなら、普通のクルマには感じさせない方が良いだろう。しかし、ラグジュアリーSUVは快適な移動を叶えてくれるべき。折り合いを付けるのは難しい。
スポーツ・モードを選びアクセルペダルを踏み込むと、ウルスは息を呑むほど圧倒的な速さを見せつける。大きなボディサイズが信じられないほど、走りはバランスに優れ、引き込まれる魅力がある。
決してアナログ・タイプのクルマではない。高速で走るほど、四輪操舵システムやトルクベクタリング、アクティブ・アンチロールバーが機能し、グリップ力や俊敏性を支えているはず。でも、その仕事ぶりに強い実感が伴うわけではない。
97km/hまで許される英国郊外の一般道で、適さないと感じる速度域までなら、ウルスは扱いやすく楽しい。1週間が過ぎた頃と同じくらい、10週目が始まる日にも、運転を楽しんでいた。
ウルスは24時間365日、スポーティなキャラクターを主張してくるわけではない。しっかり楽しむためには、このSUVがランボルギーニだということを思い出しながら乗る必要がある。
印象深かったのが、筆者の家族がウルスを大好きになっていたこと。クルマについてさほど深く考えない人だからか、深く考える人より、周囲の目などを気にしない様子が面白かった。
真価を味わうなら遠くの目的地へ走りたい
子どもたちにとっては、シンプルに楽しい2トンのSUVだったようだ。特に車内には沢山のボタンがあり、遊園地の乗り物より気に入った様子。互いのパワーウィンドウを上げ下げして、喜んでいた。
借用期間が終わり、積載車へクレーンで乗せることになった理由は、子どもたちのいたずらが原因だったのだろうか。色々なボタンを長く沢山押しすぎたためなのか、バッテリーが消耗しロックが解除できなくなっていた。
ボンネットすら開けられず、バッテリーの充電もできなかった。高価なランボルギーニを回収していったスタッフは、おとがめなしで済んだだろうか。
最初は、ウルスの存在感に恐れていた筆者。10週間をともにして、ランボルギーニ・ウルスは実用的で、かつ楽しいSUVだが、その2つが同時に常に得られるとは限らない、ということを学べた。
自宅の値段と同じくらいする、2200kgの明るいイエローの高性能SUVは、少なくとも頼れる毎日のクルマにはなってくれる。ドライバーや家族の性格をひどく変えたり、周囲から敬遠されることなく。恐らく、模範的な暮らしをしている人でも。
ランボルギーニ・ウルスの価値は、実際に目指せる遠くの目的地があれば、一層高まるはず。目的地に着いても、周囲の人から冷たい視線を集めることはないだろう。実際に普段使いした筆者は、そう思う。