【ブリヂストンが動いた】SUV用銘柄を再編 オンロードを担うアレンザ・シリーズを試す

公開 : 2021.06.15 06:45  更新 : 2021.10.18 23:45

7年分の進化は? 公道試乗

「LX100」の試乗に用いる車両はハリアー(HV)とアウディQ5の2車。

ハリアーは2台が用意され「アレンザLX100」とH/L850を比較、アウディQ5も2台準備され「アレンザLX100」と「アレンザ001」を比較できるようにセットされている。

従来モデルのデューラーH/L850、その後継となる「アレンザLX100」を比較試乗すると違いがわかる。
従来モデルのデューラーH/L850、その後継となる「アレンザLX100」を比較試乗すると違いがわかる。    宮澤佳久

先ずはハリアーをテストベッドとした実質的な新・旧比較。

H/L850も中々の好印象。発売から7年以上経っているが、快適性でも操安面でも気になる部分はない。

ロードノイズは少なく、耳障りな高周波音も程よく遮断されている。路面からの細かな突き上げも少なく、操舵感はしっかりしている。

今でもオンロード向けSUV用タイヤとしてまとまりよく、ハリアーのイメージにも似合いである。

しかし、「LX100」と乗り比べると、それも途端に色褪せてしまう。これまで体験したSUV用タイヤでも静粛性の高さは突出している。

ハリアーで試す「アレンザLX100」

「LX100」は、とくに舗装直後のアスファルトの平滑な路面での静かさは見事。トレッドノイズがほとんど聞こえない。

騒音のほとんどは風切り音や環境騒音ばかり。だからといって路面状況に神経質というわけでもない。

トヨタ・ハリアーで静粛性を検証。路面が変化すると印象の変わるタイヤは多いが……。
トヨタ・ハリアーで静粛性を検証。路面が変化すると印象の変わるタイヤは多いが……。    宮澤佳久

運転視界からも分かるほどざらついた路面になればロードノイズも意識するが、音量は少なく音質は穏やか。

舗装状況の変化による変化が抑えられているので、クルマ本体の遮音防振が向上、いわゆる厚みを感じさせる静粛性を示す。

乗り心地・操縦感覚はマイルドだがルーズではなく、衝撃を包み込むような往なしと芯の通ったクッションストロークが融合されていた。

スポーティな操縦感覚を求めるなら切れ味がちょっと穏やかすぎる嫌いがあるが、この辺りは「001」との棲み分けを考えると納得できる。

「001」と比較 アレンザの選び方は?

高性能も売りにするスポーティなSUVには「アレンザ001」。

乗り比べれば当然そんな結論になるのだが、そう断言するのも心苦しい。バランスが多少異なるものの「LX100」とも似ている部分が多い。

同じアレンザシリーズでも、「アレンザ001」は運動性を重視したオンロード向けSUVタイヤ。
同じアレンザシリーズでも、「アレンザ001」は運動性を重視したオンロード向けSUVタイヤ。    宮澤佳久

タイヤに求めている要件・考え方が共通しているのは容易に理解できる。

例えば、ともに操舵初期反応は素早く、しかしその後のCF(コーナリングフォース)の増加は穏やか。

中立の据わりのよさと予期しやすい特性は共通しているが、狙った旋回力までの所要時間は「001」が短く、操舵量も若干少ない。操舵力の変化も同様だ。

変化特性を表す曲線の曲率が異なる感じなのだ。

静粛性・乗り心地についても「001」は優等生である。快適性の総合評価ではH/L850<001<LX100の順になるが、味付けでは001≒LX100なのである。

操安性やスポーティな味わいを求めて「001」を選べば、快適性もけっこういいね、となるだろうし、快適性を求めて「LX100」を選べば高速・山岳路で扱いやすく安心感が高いね、となる。

要するにどちらもプレミアムに相応な良識ある設計と性能バランスなのだ。

オンロード志向の一般的なユーザーならどちらを選択しても高い満足度を得られる。その点では一元化してもいいのではとさえ思えるのだが、その先まで踏み込んでタイヤを選択するユーザーを見据えた「LX100」と「001」。

こだわってクルマを選ぶユーザーが見出す最適解、ブリヂストンがキャンペーンで用いる“ちゃんと買い”の神髄かもしれない。

記事に関わった人々

  • 宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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