【F90型M5の理想形】BMW M5 CSへ試乗 一般道へフォーカス 635psにマイナス70kg 後編
公開 : 2021.06.30 19:05
BMW M5の頂点に据えられる、クラブスポーツ仕様が登場。全面的な見直しで、M5へ求めるべき特性を取り戻したと英国編集部は評価します。
従来のM5より倍は乗り心地が良い
数多くの改良が施された、F90型BMW M5 CS。その仕上がりには驚かされる。サスペンションのストロークは短くなっているにも関わらず、M5 コンペティションの倍は乗り心地が良い。
ダンパーをコンフォート・モードにすれば、突出した柔軟性が得られ、英国郊外の一般道を安定して滑らかに駆け抜けられる。従来のM5が備えていた、やや落ち着きが足りなく、路面の影響を受けやすかった特性を一掃させている。
滑らかな路面でスポーツ・モードに切り替えれば、M5 CSは引き締まり、長波長のうねりに対してピタリと追従。しかし垂直方向の姿勢制御が、圧倒されるほど硬くなるわけではない。
ステアリングの改善も明確。感触に乏しくゴムっぽかった印象が改められ、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sタイヤを通じて確かな接地感をドライバーに伝えてくれる。フロントタイヤの状態を、より把握しやすくなった。
リアタイヤも、従来以上に路面を掴む感覚がある。これまでのF90型M5には欠けていた、挙動の予想のしやすさやフィーリングの濃さが強く光る。よりドライバーズカーとしての特性が磨かれたといえる。
基本的な懐の太さは従来どおり。駆動系がシンプルになる後輪駆動モードにすれば、攻め込んだ領域での充足感は一層深い。英国の一般道の最高速度、97km/hの範囲でも限界に迫ることは可能。法を犯すことなく、思う存分、意のままに操れる。
ドライビング体験のすべてが改善
まさに、BMWのクラブスポーツに最も期待する特性だと思う。ハードコアとまではいかず、フィーリングが濃く特別。誇張されずに、ドライビング体験のすべてが改善されている。客観的に測定可能な、数値的なこととは別の次元での進化だ。
ステアリングホイールに付いたM1とM2の、お気に入りのドライブモードを呼び出すショートカット・ボタンを活用できれば、路面状況に合わせて一層豊かな体験を享受できる。最新のM3やM4と同様に。
複雑な各機能の設定を、ドライバーが任意に選びオレンジのボタンへ登録するという、BMWが編み出した方法は感心するほど勝手が良い。この部分だけ見ても、ライバルモデルより訴求力を高めていると思う。
エンジンやドライブトレイン、サスペンション、ステアリング、スタビリティ・コントロールを個別に設定し、プリセットとして保存すること自体も簡単。それぞれの変更が終わったら、ステアリングホイール上のボタンのどちらかを長押しすれば完了する。
乗るたびに、毎回設定し直す必要はない。ドライバーの好みに応じて繊細な調整が加えられ、テレビゲームの操作のように、ボタン1つでBMW M5 CSの個性を切り替えられる。
21世紀のデジタル・エンターテインメント的な機能だと思う。実際のクルマでこんな体験ができるとは、唸らされる。