【上質なデイリーカー】新型アウディA3スポーツバック1stエディション試乗 ゴルフより良き肌なじみ 

公開 : 2021.06.21 05:45  更新 : 2022.03.24 21:24

肌なじみの良さ ゴルフより秀逸

クルマ好きにとっては趣味性も託せるデイリーカーの本丸は、適度なパワーをクワトロで受け止める40 TFSIの側かもしれないが、それは秋ごろの上陸になるということで、今回試乗したA3はスポーツバックの30 TFSIで、アドバンストをベースに装備を盛るだけ盛った感のある1stエディションだった。

動的質感に影響を及ぼしそうな独自装備はSラインと同じ18インチのタイヤ&ホイールのみということで、ともあれ装備差を勘案しながら室内を品定めする。

アウディA3スポーツバック1stエディション
アウディA3スポーツバック1stエディション    山本佳吾

A3の内外装の質感は、パッと見の印象として、先代以前のようにA4にも食ってかかるような下剋上的オーラはない。

背景としてはアウディ側のコストバランスの事情もあればライバルたちのキャッチアップもあるだろう。

でも1つ勘案しなければならないのは、彼ら自身が圧倒的精緻さをみせるべく、示威的なまでに作り込んでいた細かなプレスラインが大幅に整理され、塊や面の表情でみせるデザインへと指向が変わったことだ。それは直近のA4やA6をみても然りである。

アーキテクチャーを共有するゴルフ8が大胆なインターフェースのデジタル化に走ったのに比べると、A3はむしろオーソドックスな方で、空調やドライブセレクターなどは物理スイッチが残されている。

シフトセレクターなどバイワイヤー化された所も多いが、オーディオコントローラーなどはスタータースイッチと対の位置に配して右左ハンドルの作り分けを容易にしつつ、円型に沿って直感的な操作が出来るように配慮されている辺りは賢いなぁと感心させられる。

一等地に10インチ級のインフォテインメントモニターが陣取ったため、吹出口が苦しい配置になってしまったりと落ち着かない印象もあるが、使い勝手や肌馴染みの良さはゴルフ8より上だと思う。

「上質なデイリーカー」 タイヤは気になる

30TFSIに搭載される1.0L 3気筒はフォルクスワーゲンのUP!やアウディA4などでも用いられてきたユニットだが、バランサーレス設計でもここまで音/振動をすっきり仕上げられるかと感心させられる素性を持っており、A3のクラス感を台無しにしてしまうような粗相はない。

低回転域ではBASのモーターアシストがはっきりと奏功しており、小排気量や過給のラグといった弱点を見事に帳消しにしている。

アウディA3スポーツバック1stエディション
アウディA3スポーツバック1stエディション    山本佳吾

中~高回転域域に至ればモーターアシストの効果も薄れ、エンジンの生のパワーで走ることになるが、120km/h付近に至るまで速度の伸びが息つくこともない。

回して嬉しいエンジンでないことはたしかだが、きっちりと速度を高めていくサマに、昔のドイツ車の実用エンジンのような粘り気を感じる方もいるかもしれない。

フットワークは低扁平な18インチにトーションビームの組み合わせによる弊害が端々に感じられる。

コーナーではタイヤの横剛性の高さにグイグイと引っ張られる感もあり、タウンスピードでも些細な轍での横揺れが多い印象だ。

速度が高まればフラットなライド感におさまっていくが、クルマの性格や抱えるパワー、そしてゴルフ8に乗った印象も鑑みれば16インチ~17インチ辺りが適切かなという気もする。

背後のブランドイメージもあってとかくスペシャリティ的な捉えられ方もなされるが、パッケージやダイナミクスも至って実直なA3は、多くの人に薦められる上質なデイリーカーでもある。

もし趣味性の面で物足りなさを感じたら、先述の通り後に投入される40 TFSIクワトロを待つのもいいし(個人的にはこれがベストバランスではないかと予想している)、値段は張るが素晴らしいフットワークを備えたS3を検討するのもいいかと思う。

アウディA3スポーツバック1stエディションのスペック

価格:453万円
全長:4345mm
全幅:1815mm
全高:1450mm
ホイールベース:2635mm
車両重量:1320kg
パワートレイン:直列3気筒999ccターボ+48Vマイルドハイブリッド
最高出力:110ps/ 5500rpm
最大トルク:20.4kg-m/2000-3000rpm
ギアボックス:7速Sトロニック

アウディA3スポーツバック1stエディション
アウディA3スポーツバック1stエディション    山本佳吾

記事に関わった人々

  • 山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。

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