【チームで作るアリエル・アトム】ベスト・ドライバーズカーの誕生現場 AUTOCARアワード2021
公開 : 2021.06.23 15:05
軽量でパワフルなドライバーズカーを生み出し続ける、アリエル・モーター社。2020年のBBDCでの勝利を称え、英国編集部が製造現場へお邪魔しました。
2回の優勝を獲得したアリエル・アトム
AUTOCARの年末恒例企画、その年の1番を決めるベスト・ドライバーズカー・コンテスト(BBDC)。2度の優勝を獲得し、詳細テストでも満点の評価が与えられているのが、アリエル・アトムだ。
そんなクルマを生み出すアリエル・モーター社も、負けじと素晴らしい会社だった。今回は、その本社へお邪魔する機会を得た。
アリエル・モーター社を初めて訪ねる人は、気付かずに前を行き過ぎてしまうかもしれない。英国南部、サマセットのクルーカーンにオフィスはある。小さな納屋か工業施設のように見えるレンガ造りの建物、数件で構成されている場所だ。
一見すると、世界をリードするようなスポーツカーが生まれる場所には思えない。右手にサービス部門、左手に生産ラインと本社オフィス、研究開発部門や技術スタジオがある。拡張計画はあるというが、うまく組織だてられている場所に違いないのだろう。
アリエルは、何かに取り組むならキチッと仕上げる。実際に中へ入ってみると、素晴らしい場所だった。アトム4が美しく組み上げられる理由も、良く理解できる。
筆者は今回、アリエルの日常を取材しに来た。ゼネラルマネージャーを務めるトム・シーバートの仕事ぶりは、良く知っている。AUTOCARとは、何年にも及ぶ長い付き合いがある。
刺激的な彼だから、2日と同じ日はないだろうと期待したが、そんなことはないらしい。「日常的な流れがあります。今のところ。朝の7時45分にオフィスに来て、10時までEメールを確認します」
バイク好きなことがモデル製作を助けている
「それから電話の応対。お客様やビジネス関係者など。仕事の大半は人事に関することですね」。シーバートが説明する。
シーバートは数年をかけて、アリエル社を創業した祖父のサイモン・サンダースから日々の業務を受け継いできた。「わたしの仕事は、すべてを整理すること。予算や顧客との取り引きのほか、床のタイルを仲間が直すことについても」
アトム社に電話をかけると、クルマの開発をともに進めるトムの兄弟、ヘンリー・シーバート・サンダースや、創業者のサイモン・サンダースが出る可能性はある。トム・シーバート本人も。
顧客との会話やメディア対応は、シーバートの仕事で一番楽しい部分だという。「長い間、適切なビジネス構造の構築に力を注いできました。スタッフを細かく管理しなくても、すべてが機能するように」
「以前は、サイダーを飲みながらクルマを作りたいと考える、男の集まりでしたね」。かつてのアリエル社の姿を、シーバートが表現する。そんな彼らが、素晴らしいクルマを作ってきた。
タイヤが2本のモデル、つまりバイクのエースは、アトム4やノマドより仕上がりが一層良い。「われわれがバイク好きであることが、モデル製作の助けになっています」
「(メカニズムなど)すべてが表に見えるので、エンジニアリングの視点では素晴らしい必要があります。つまらない部品でも」
シーバートが話を続ける。「実際に仕上がったクルマへ触れる時は興奮します。運転も好きですし、調整を加えることも好きです。最終的には、チームとしての努力の成果です」