【チームで作るアリエル・アトム】ベスト・ドライバーズカーの誕生現場 AUTOCARアワード2021
公開 : 2021.06.23 15:05
新しいノマドの開発が進行中
「われわれの実力以上を求めているので、必要なこと。全員からアイデアを集め、サイモンとヘンリー、わたしの3名で方向性を決めていきます。自分は会社の立ち上げ当初からいるので、モデルの知識も持っていますから」
祖父のサイモン・サンダースは1996年、英国モーターショーに出展されたライトウェイト・スポーツカーのコンセプトを気に入り、アトムとして具現化させた。彼は当時、友人と2人で会社を経営していた。
「わたしは子供の頃からバイクに夢中でした。クルマへの興味はそれほど」。シーバートが打ち明ける。「バイク・ショップに就職し、離れて住んでいました」
「ある日、母から電話があり、おじいさんが困っているから助けて欲しいと頼まれたんです」。祖父の友人が病気になり、当初は3か月だけ手伝う予定だったという。「それ以来、ずっとここにいるんですよ」
2000年8月のことだった。クルマへ興味のなかった人物が、今では同社に欠かせない人物になっている。「当初は、アトム1を5台か6台作る程度の規模でした。初歩的なクルマでしたが仕上がりは良く、不思議なことに多くは日本へ輸出されています」
「その中の1台は手に入れたいと思っています。ミュージアムへ飾るために」。現在は新しいノマドの開発が進められているが、プロトタイプには至っていない。続いて、レンジエクステンダー・エンジンとバッテリーを載せたEVが続くという。
次のアリエル・アトムも、再び英国ベスト・ドライバーズカーの栄冠を掴むのだろうか。
アリエル・アトムがBBDCを獲得した理由
英国製のクルマが、AUTOCARの英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)に選出されることは珍しい。しかしアリエル・アトム4は、これまで2回の優勝を掴んでいる。2020年の優勝を受けて、2021年はコンテストに参加することはない。
濡れた路面に低い気温で開催された2020年のコンテストは、アトムにとって好条件とはいえなかった。運転するドライバーにとっても。しかし、最も純粋なドライビング体験を与えてくれるクルマだった。
俊敏で動力性能に余裕があり、素晴らしくリニアで情報量豊かな操縦性を備えていた。ドライバーは運転というすべての動作に惹き込まれ、クルマの状況を正確に把握することが可能だった。
本物のドライバーズカーとして、非常に重要なカギを併せ持っている。目的に叶う類まれな能力と、クルマの状況をドライバーに伝える能力。アリエル・アトム4は、これを見事に両立させている。
アリエル・モーター社の起源
アリエルは、1870年代の自転車にまでさかのぼる。ペニー・ファージングと呼ばれる、巨大な前輪にペダルが付いていた時代の自転車だ。アリエルのものはワイヤースポークのホイールを備え、同時期の競合製品より軽く仕上がっていた。
社名は、その空気のように軽い作りから来ている。1898年にエンジンを載せたトライクを開発。1901年には四輪自転車を手掛け、2輪のバイクを1902年に発売した。しかし当初は、自転車メーカーの域を超えていなかった。
その後は一度破産。BSAモーターサイクル社との合併を経るが、1970年にブランド名は途絶えてしまう。
自動車デザイナーで大学講師も務めていたサイモン・サンダースが、1999年にアトムを発表する際、ブランド名としてアリエルを復活させた。オリジナルは彼の学生、ニキ・スマートがデザインしたライトウェイト・スポーツカーだった。
現在のアリエルは、英国南部のクルーカーンに拠点を置く。各年代のアリエルのコレクションも進めているという。