【唯一無二のリアシート時間】メルセデス・マイバッハSクラス S 680へ試乗 ラストV12 後編
公開 : 2021.06.29 19:05
メルセデスが生み出す最も高価なモデルに位置づけられる、マイバッハSクラス。ロールス・ロイス級を目指したV12エンジンのリムジンを、英国編集部が評価しました。
ベンツのSクラスと多くを共有する事実
メルセデス・マイバッハSクラスは、最上級のメルセデス・ベンツSクラスよりさらに上の、別次元といえる操縦性を提供してくれる。エアスプリング内の機構が自動的にボディを傾け、乗員に掛かる横方向の力を軽減し、幸福な車内を一切乱さない。
ただしマイバッハS 680は、ロールス・ロイス・ゴーストやベントレー・フライングスパーのような、孤高の独自性までは獲得できていないことも事実。
ドイツ・シュツットガルトのデザインチームは、マイバッハとして差別化を図るべく、多くの時間を割いたことは間違いない。しかし、特にボディは、メルセデス・ベンツと多くを共有していることを感じずにはいられない。少し残念でもある。
試乗車のツートンカラーはオプション。マイバッハ独自のフロントグリルとフロントバンパー、中央にクロームメッキのリブが入るボンネットなどはオリジナル。Cピラーに配されるマイバッハのエンブレムも、目を引くワンポイントになっている。
リアバンパーとマフラーカッターも独自のデザインだ。だが、メルセデス・ベンツSクラスの香りは残っている。
インテリアも同様。知覚品質は極めて高く、感心するほど広々とした空間が与えられている。それでも、ダッシュボード上方には長方形のエアコン送風口が並び、メルセデス・ベンツの部品が利用されていることがわかってしまう。
リムジンと呼ぶにふさわしい車内
ステアリングホイールは、タッチセンサーが付いたマルチファンクションのオリジナル。12.3インチのモニター式のメターパネルと、11.9インチのインフォテイメント用タッチモニターには、マイバッハ独自のグラフィックが与えられた。
ダッシュボード周辺の雰囲気は、整然とした印象。実際に押せるスイッチなど、アナログな操作系は殆ど残っていない。エアコンのインターフェイスも、モニター内に統合された。多くの機能は、音声とジェスチャーの認識機能にも対応している。
拡張現実も採用した、新しいヘッドアップ・ディスプレイはオプション装備。フロントシートの背もたれ部分にサブウーファーが内蔵される、ブルメスター社製の30スピーカー 4Dサウンドシステムも装備できる。アンプの出力は1750Wもある。
マイバッハとして変更するための労力の大部分は、リアシート側に注がれている。標準では3名がけのベンチシートが組まれるが、多くのユーザーは2名がけの独立したエグゼクティブ・シートを選択するだろう。
シートの正面には、11.3インチのタッチモニターが用意される。クルマの外でも利用できる、コントロール・タブレットも付いてくる。
リアシート側の空間は、そのほぼ全面が柔らかいナッパレザーで仕立てられる。足もと空間は、メルセデス・ベンツSクラスより85mmも伸ばされた。まさに本物のリムジンと呼ぶのにふさわしい車内だ。